12.あらすじ

 こんばんは。


 今回は前回の説明が難しすぎるという指摘がありましたので、極簡単にわかりやすいたとえ方で説明していこうと思います。


 おさらいになってしまうので、前回で概要が理解していただけた方は、飛ばしていただいてかまいません。


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 お話の<あらすじ>は<起承転結>という、流れで出来ているという話を前にしたと思います。


 その<起承転結>をわかりやすく分解すると、


 起:お話の始まり(登場人物が出てくる)

 承:お話の中で問題が起こる。(登場人物が行動を起こす)

 転:お話の中で起こった問題に変化が現れる。(登場人物が問題に対して決断・解決の糸口を見つける)

 結:お話の問題が解決する。(登場人物が問題を解決する)


 これだけでは、よく分からない場合もあると思いますので、もっと簡単なたとえ話をします。


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 起:誕生日に男の子はお父さんの帰りを待っていたが、お父さんは帰ってこない。ふてくされた男の子がいやいや寝室に行く。しかし、なかなか寝られないでいる。

 承:すると、部屋の壁に扉が開く。ピエロが現れ、壁の扉の中に誘う。男の子は扉の中に入っていき、いろんな面白い体験をする。

 転:ピエロがもうお父さんなんていなくてもいいよねとそそのかす。ここで楽しく暮らそうよと言われる。男の子はどうしようかと迷う。壁の向こうにお父さんが男の子が好きなおもちゃを置いてそっと部屋を出て行く場面が見える。

 結:やっぱり、元の世界に戻りたい。でもピエロは手を放してくれない。そのとき、時計の雄鳥が鳴いて夜が明ける。男の子は一人取り残されて泣いてしまうが、気がつくと布団の中だった。枕元にはお父さんからのバースデーカードとプレゼントが置いてあった。


 この<あらすじ>で読者に伝えたい内容は、「大好きな人は別のものでは代償がきかない」というところでしょうか。


 この一文を元に、上記の<起承転結>をまとめていくようにしてください。


 男の子がピエロの様々な誘惑に魅了されながらも、やっぱり大好きなお父さんのことが気になって仕方ないという、一貫した筋書きが、<テーマ>と言われるものになります。


 そのためには、お父さんの帰りを待つ男の子の気持ちを十分に書く必要がありますし、男の子の部屋にプレゼントを置きに来るお父さんの姿がその気持ちを裏付けることになるでしょう。


 お父さんの愛情とお父さんを慕う男の子の気持ちが読者に十分伝わるように、お話の筋書きに、<動機付け><伏線>を張っていく必要があります。


 ピエロが提供するあらゆる面白いことに対して、男の子がことごとく、お父さんがいたらこうするかも、という感想を付け添えれば、最後にお父さんのところに帰りたいという男の子の切実な願いに繋がると思いますし、ピエロについて行かないと思わせるだけの説得力を持たせることが出来ます。


 難しく考えるよりも、お話を考えたときに、読者に何を伝えるのか、一貫した考えでお話を組み立てることが出来れば、お話は成功したと言えるでしょう。


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 より細かく解説するとすれば、


 起:男の子はせっかくの誕生日に仕事で帰ってこない大好きなお父さんに腹を立てる。なぜ腹を立てるかというと、プレゼントよりもお父さんにお祝いして欲しいから。だから、お父さんが帰ってくるまで寝たくないとわがままを言うが、寝室に連れて行かれてしまう。男の子は悲しくて泣いてしまう。


 承:泣いていると、かたかたと音がして、壁に四角い扉が現れる。そこからピエロが登場して、何で泣いているのか訊ねてくる。ふて腐れていた男の子は、思ってもいないようなこと(たとえばお父さんなんて大嫌い)をいう。それならお誕生日をピエロが祝ってくれるというのでついて行く。ピエロはこんなことはお父さんに出来ないだろうと、たくさんの不思議なことを披露してくれる。でも、男の子は心の中で、お父さんだったらこうするだろうな、などと考えてしまう。


 転:さんざん遊んだ後、ピエロがいっそのこと、お父さんのことは忘れてしまって、ここに一緒に遊んで暮らさないかい? と誘ってくる。ピエロはお父さんにはこんなことなんか出来ないだろうと、すばらしいものをたくさん見せてくれる。確かにそれは男の子の心を揺さぶった。それでも男の子が迷っていると、ピエロがお父さんは君がいないことも気づかないんだよと言って、部屋の様子を見せてくれる。そこには、大きなプレゼントを持って枕元に置くお父さんの姿があった。


 結:どんなに楽しいことをピエロが提供してくれても、お父さんが男の子にしてくれることの方が数倍楽しいし、何よりお父さんが大好きだという気持ちを男の子は思い出す。けれど、ピエロは意地悪そうに、もう元の世界に戻ることなんて出来ないんだよ、と男の子に告げる。男の子が悲しくなって、お父さんに謝りながら、元の世界に戻りたいと後悔すると、男の子の部屋にある雄鳥の時計が朝が来たことを知らせる。すると、突然ピエロが慌てて逃げ出した。気がつくと、男の子はベッドの中にいた。涙で頬が濡れている。枕元にはお父さんのプレゼントがある。バースデーカードにはお父さんの愛してるという言葉が書いてあった。


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 <あらすじ>からしっかりとした骨子を作るのは大変かもしれません。


 でも、男の子がなぜ怒ったのか。どれほどお父さんに期待していたのか。また、お父さんのことをどれほど好きなのか。


 そして、男の子の気持ちを見透かしたように、お父さんには出来ないようなすばらしい誘惑を見せるピエロの存在が必要です。


 ピエロからあらゆるすばらしいものを見せられても、なぜか心の中ではお父さんと比べてしまう男の子の心情は、お父さんに対してどんなに怒っていたとしても、大好きだという気持ちをごまかすことが出来ない現れでもあります。


 そのため、お父さんの姿を見てしまった男の子の心はやっぱりお父さんが大好きだと確信します。


 ピエロの誘惑は功をなさず、失敗に終わり、朝を告げる時計の雄鳥の声で逃げ出します。


 取り残されたと思い、絶望になく男の子はこれが全て夢だと気づきます。ほっとしたところに男の子はお父さんのプレゼントを見つけます。


 お話をもっと引き締めるために、男の子がベッドから起きるとピエロの操り人形が床に落ちていることに気づく。という場面で締めくくると面白いかもしれません。


 どんな誘惑も本当の愛情には勝てないというわけです。


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 これらのお話は、お話を組み立てる上での一例に過ぎません。


 最初に提示した、


 起:お話の始まり(登場人物が出てくる)

 承:お話の中で問題が起こる。(登場人物が行動を起こす)

 転:お話の中で起こった問題に変化が現れる。(登場人物が問題に対して決断・解決の糸口を見つける)

 結:お話の問題が解決する。(登場人物が問題を解決する)


 と、<動機付け><伏線>、さらに重要な、読者に伝えたい<テーマ>である「大好きな人は別のものでは代償がきかない」、これを忘れないようにしながら、お話を組み立てていきましょう。


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 極簡単に書きましたが、この概要だと、およそ原稿用紙50枚。絵本くらいのお話か、短い児童文学・短編の長さになります。


 短いお話をたくさん書きたい方は、前回のように細かい<起承転結>を作る必要はありません。


 読者になにが伝えたいのか、これだけをしっかりと頭に焼き付けてお話を書いていきましょう。


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 では、次回は骨子に付ける、血肉やアクセサリーについて、少しずつ詳しく話していきたいと思います。

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