第23話

自宅に戻り子供達に心配をかけたこと、そして新しいパパは来ない事を話さなければならない。

夕飯の後、子供達の部屋に行き話をした。


「新しいパパいらないよね……? ママお断りしたから心配しないで」


「ママ、結婚しない?」


奈々が尋ねる。士雨は俯いたまま顔をあげない。

突然の私の言葉に少し驚いている様だが。


「士雨……。 ごめんね。 嫌な思いさせちゃったよね? これからもばぁばと皆んなと頑張ろ?」


「ママはそれで幸せ? 新しい人の事、好きなんじゃないの? 僕達びっくりして嫌な態度とっちゃったけど、ママ大丈夫なの?」


顔を上げ、真剣な眼差しで言った。


「ママはあなた達がいればいいの。 それがママの幸せだよ」


違わない。事実だ……。けれど心の中で何かが引っかかる。


しかしもう言ってしまった言葉は取り消せない。大丈夫。元に戻っただけだ。


二人をベットへ寝かせ部屋を出た。



リビングでスマホを眺めながら自作のブレンドティーを口にする。

今まで葉野君とのメールのやり取りや、会話を思い出し、胸の中が苦しい……。


未来を夢見た結果がこれだ。でも仕方ない。

不安定なまま側に居られないし。


受信メールをスクロールして涙が出た。


「葉野君……」


想うは貴方唯一人。甦るはあの頃の自分。

真っ直ぐに貴方を想って切なくなっていた頃……。


「元気でね」


受信メールを削除した。勿論送信メールも。

片想いはやっぱり叶わない物で、苦しいものでしかない。


二十年後も叶わぬ想いに蓋をした。

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