第3話

彼のケータイ番号が書かれたメモを見つめ、私は思案した。


「同窓会で会えるのに、 電話しても迷惑よね……。 でも当日話せるか分からないし」


暫く考え、再びスマホをてに取った。


私のこの行動の早さ、あの頃あったら良かったのに。


考えた挙句、当たり障りのないメールを送る事にした。


心臓は既に限界なくらいにバクバクしている。

メールするだけなのに、こんなにも心臓がうるさくなるのか。




『大原ふゆと申します。 覚えていますか? 突然にメール、ごめんなさい』


挨拶文から打った。


現在の事や同窓会についての文を打ち、送信ボタンを震える手で押した。


もう取り消しきかない……。


スマホをテーブルの上に置き、子供達をお風呂に入れた。


「ねぇお母さん。 さっき誰と話してたの?」

長男の士雨しう が質問してきた。


「うーん。 お母さんのお友達のお家だよ」


「じゃあメールは?」


……見てたのか。侮れないな。


「昔のお友達だよ」


「お母さん、 顔あかーい!」


長女の菜々が言った。


もう! 子供って本当よく見てる事。


「いいから、 早く上がろう」



パジャマに着替えテーブルの上のスマホを見た。


「ん? メール?」


受信ボックスを開き固まった。



「ウソ! 葉野君からだ!」


彼から返信がきたのだ。


再び心臓がバクバクする……。


私は返信メールを見た。



『久しぶり! 元気だった? 同窓会行くよ。 会えるの楽しみだね。』


そう書かれていた。


うーん。確かに久しぶりだが、久しぶり過ぎないか?二十年は久しぶりなんだな。


でも嬉しかった。本当に嬉しかった。


何の疑問もなく返信する彼。突然元クラスメイトからの、しかも余り接点のない相手からのメールに、何の疑問も持たずに久しぶりと返す彼。


「不思議だとか思わないのかな?」


そうは言ってもやはり嬉しいので、月ちゃんに報告メールをした。


私の一連の行動にやや驚いていた様だが、良かったね。と言う返信がきた。


うん。良かったよ。


ずっとずっと好きだった。中学に入って、益々接点無くなってもたまに見かけるとドキドキした。


中学の途中で転校した私だったが、偶然会った時など手を振ってくれたし、分け隔てなくの同級生。


中学時代、別の人を好きになった時もあったが、結局はまた彼を想った。



「お母さん。 寝よ〜?」


目をこすりながら菜々がそう言った。


「片づけあるから先寝なさい」


「分かった。 お休みなさーい」



私は昼間できなかった部屋の片づけなどをしながら、やっぱり返信が嬉しくて。


「久しぶりかぁ。 へんなの……」


独り言を言ったりした。



やっぱり面白い人だ。奥さんが羨ましい。


もしも勇気を出して告白していても。付き合うとかは多分なかった。


ただの同級生だから。


少しの寂しさと後悔はあるが、人生何て分からないなと思った。

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