第2話

夕食後、私は卒業アルバムを押入れから引っ張り出した。


小学校の卒業アルバム。


「久しぶりだ」


少しドキドキしながらページを開いた。


先ずは先生方のメッセージ。


六年一組のページ。


六年二組のページ……。


あの頃の集合写真。懐かしい顔があった。


あどけない私の姿も。

当時は今の私など、想像すらつかない。


「皆子供だなぁ」


小学校時代、かっこいいと思った男子も、やはり小学生。今頃皆どうしてるのかな。


卒業文集。色んな事が書いてある。

それぞれの思いの詰まった卒業アルバム。


一つ一つ思い返し、ページをめくる。


『十年後の自分』


手が止まった。十年後の自分か。働いてたよ。

それから数年後結婚したけどね。


まるでタイムスリップしたかの様に、当時の思いが蘇る。


「早く皆に会いたいなぁ……」


思い出は単なる思い出。過ぎ去った過去。


しかし、集合写真の葉野君の姿を見た時、私の気持ちは小学生に戻ったかの様になった。




小学校六年生。


ざわつく教室。ふざけあうクラスメイト。


休み時間はいつもこんな感じだ。


その中で一際目立つ彼がいた。


どちらかと言えばモテるとかではないが、クラスで人気があった。


面白い人。といえばいいのだろうか。

とにかくクラスで人気のある人だった。


比較的大人しく目立たない私は、そんな彼を羨ましく思っていた。

憧れと言う物も抱き、いつも目で追ってしまう。


誰にでも普通に話し、打ち解ける彼。

接点はなかったが、彼の笑う声を聴けるだけで嬉しかった。



二十年。その間にももちろんクラス会等開かれたが、私は彼に声すらかけられなかった。


それからは、私の引越し等があったりして、そう言う物には出席しなくなった。



久しぶりに開かれる同窓会。久しぶりに会う彼は、どんな風になっているのだろう。


ふとアルバムの住所の欄が目に入った。


……。


いや。同窓会で会うし。それにいきなりは。



彼の住所と電話番号。もちろん当時の物だ。


「さすがに結婚したよな」


いい年だもの。結婚して実家にいないだろう……。


そう思うけれど。どうしても気になった。

今どうしているのかが。



昔からの悪いクセだ。気になったらとことん気にしてしまう。



「いるわけないよね……」


スマホ片手に彼の家に電話をしていた。


私って……。



数回のコールの後 『はい。 葉野でございます』


やや年配の女の人が出た。


彼のお母さんだ!


直感的にそう思ったのは、昔彼の家に電話をした事があるからだ。


声の感じは変わっていなかった。


『もしもし……。 あの大原と申します』


旧姓を名乗った。


離婚したが、子供の事を考えて名前は変えていなかった。


『あら? 大原さん? お久しぶり。 元気だった?』


やはり覚えていてくれた。


小学校時代、何回か会って少し話した事があった。


『お久しぶりです……』


妙に緊張する。


『紘斗ね。 結婚して今いないのよ。 あ! 直接電話してみて?』


え? 直接ですか……?いや。でもそれは。


『番号言うわね?』


あっさりと連絡先を教わった……。


いくら同級生でも、いいのだろうか。


まあいいや……。


私は彼のケータイの番号のメモを見つめた。

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