第13話 裏で動きはじめる


準備を終え部屋を出るとアリーシャ達は待っており


「はやく、行くわよ」


「わかったよ。さっさと仕事終わらせようぜ」


「狙われてるかもしれないんだからちゃんとしてよね」


「了解。」


イオルは、めんどくさそうに頷くとドアを開けて出て行った。



馬車に乗り込むとアリーシャが話を切り出してきた。


「それで、今日は怪しいやつ居たの?」


「私は、特に気づきませんでしたが」


「俺も、さっき乗り込むとき気にしてたんだが居ないそうだったぞ」


2人して居ないと言っているのでアリーシャは、少し肩透かしをくらった気分になった。


「じゃあ、取り敢えずは大丈夫そうね。さっさと会談を終わらせるわよ」


「そうだな」




その後、会談は何事もなく終わりイオルたちは帰路についていた。


「ホント、何もなかったわね。」


「そうですね。こちらが警戒しているのに気づかれたのでしょうか?」


「うーん、そんな事は無いと思うんだけどなぁ…。」


イオルは、自信はなさげに否定をする


「面倒な事は早めに解決したいわよね。」


アリーシャは、ウンザリしているような口調だった。


「そうだなぁ、俺もはやく仕事終わらせたいしな」


イオルも、ウンザリしていた


「馬車に乗っているから気づかないだけなのでしょうか?」


「そうかもな、歩いてたら視線も感じやすいから気づけたからな」


「じゃあ、これからは馬車やめて歩く?」


「いや、それだと向こうに不審感を抱かせるかもしれないから今まで通り馬車で移動しよう。」


イオルは、ちゃんと考えているのかただ自分が歩きたくないだけなのか分からないが有無を言わさなかった。


「わかりました。イオルさんの言う通りにしましょう。」



結局、その日は馬車の中に乗っている間も特に変わったことは無く商会に無事着いた。


「明日は、何か仕事あるのか?」


「あるわよ。明日は魔道具の商談があるのよ」


「魔道具の商談って何か仕入れるのか?」


アリーシャが魔道具と言ったので興味を持ったのかイオルが問いかけた


「違うわ。今回の商談する所は今まで私たちの魔道具は買ってなかったけど最近買いたいって言ってきたのよ」


「なるほど。お前の所で買った魔道具を他の所で売ろうとしてんだな。」


「そうでしょうね。でも、こっちは値段下げるつもり無いから利益が出たとしても大したことないと思うけどね」


アリーシャがハッキリと言い切るとそれを聞いたイオルが引いたそうな声を出した。


「うっわぁ…。がめつい商売してるなぁ」


それを聞いたアリーシャは心外そうに


「何アホな事言ってるのよ。商売なんだからがめつくて当然じゃない。あんたは、昔の私を知ってるんだからそれくらいするのは分かるでしょうが」


「まあ、そうだな…」


アリーシャの反論を聞いたイオルは、色々思い出して理解したのか気まづそうに納得した。


「そ、そんなしんみりするんじゃないわよ!」


「あ、ああ。悪い」


重い空気になるというとは思っておらずアリーシャは空気を壊すように大きな声を出したがイオルはまだ微妙な感じだった。


コンコン


「会長、イオルさん。夕飯が出来ました」


微妙な空気になった部屋に救いの声が響いた


「わかったわ。すぐ行く」


アリーシャは、ハンナに返事をした。


「ほら、あんたもさっさと行くわよ」


アリーシャは本当に気にしていないようで立ち上がりさっさと部屋を出て行ってしまった。


「はあ、わかったよ」


そんなアリーシャの様子にイオルは苦笑しながら立ち上がり続いて部屋をでた。








その頃、ドンゲル商会



「それで、昨日の報告にあったアリーシャ商会の会長の側に護衛とは別の男がいたとはどういうことだ?」


ドンゲルが、アリーシャ達をつけていた男に問いかける


「はい、庶民の格好をした男が一緒にいました。」


質問に答えるとドンゲルは不服そうに


「その男は護衛ではないのか?」


先ほどより機嫌が悪くなったドンゲルが問う


「いえ、それは無いかと。」


「何故そう考える」


どんどん機嫌が悪くなっていくドンゲル。恐らく、自分との共同案を蹴ったアリーシャが呑気に男を連れているのを見て怒りが湧き出しているのであろうと考えられる


「冒険者といった格好ではなかったですし、戦士というには体運びが素人のものでした。魔導士の可能性は有りますが杖を持っていなかったので大したことはないでしょう」


男がハッキリと否定するとドンゲルは少し考え込んだ



(その男を戦力に考えないとすると外出時の護衛は女魔導士1人だけならこちらが複数人で攻めれば容易く殺ることが出来るが…)


「お前は、どう思う?」


ドンゲルは同じくその場にいた雇っている護衛の魔導士アルスに問いかけた。


「おそらく制圧は簡単でしょう。しかし、それが我々の仕業だとバレてしまうと面倒な事になります。向こうが魔導士1人ならこちらは魔力を探知されない弓兵で敵を仕留めるのがベストかと」


アルスは、状況を把握しこちらのリスクも計算した上で考えうるベストの案をだした。


「うむ、ではそうするか。今からウチで一番の弓兵をここに呼べ」


そういうと壁際に立って事のなりゆきを見ていた部下が返事をして出ていった


「直接みたお前は、アリーシャを仕留められると思うか?」


「おそらく可能かと。向こうはこちらが狙っているとは知りませんし例え気づいていたとしても狙撃ならばこちらが有利かと」


男は、恐る恐るといった感じで意見を述べる


「そう思うか、わかった下がれ」


「はっ、失礼します。」


そういうとその男は部屋から出ていった。


「ドンゲル様、弓兵を連れてきました。」


先ほど出ていった部下が戻ってきた


「はいれ。」


「失礼します。」


「失礼します。」


部屋に先ほど出ていった部下と細身で長身で男が入ってきた。


「お前がウチで一番の弓兵なのか?」


「は、はいっ。大変恐縮ですがおそらく自分が弓の腕は一番なのかと。」


「では、仕事を与える。明日にでもアリーシャを殺せ、ただし絶対に見つかったり捕まったりするなよ。」


ドンゲルがより一層声のトーンを落として言った


「はっ!わかりました。」


「では、もう下がっていいぞ」


「はっ!失礼しました。」


そう言って弓兵の男が部屋を出ていくとドンゲルは明日の結果を予想しほくそ笑んでいた。











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