第7話 国王公認の休みを獲得した

しばらく大人しく料理が出来るのを待っているとマリーが料理を持って出てきた


「お待たせ、出来たわよ。」


「おお!待ってたぜマリー!何を作ってくれたんだ?」


イオルはマリーの料理に興味深々なのか急かすように質問してきた。

マリーの料理の腕は料理長やミレイアほどではないが昔からイオルに料理を作っていたのでイオルにとっては食べ慣れた味であり、特別なのである。


「これから、お昼食べるんだから軽めにしたわよ。ロールパンに茹でて柔らかくした芋に塩胡椒振って挟んだのとベーコンエッグにしといたわよ。」


そう言うとマリーは料理をイオルの前に置いた


「おおっ!相変わらず美味そうだな!それに昼飯前にはちょうどいい感じの量だな。」


目を輝かせながら嬉しそうに料理をみるイオルにマリーも自然と頰が緩む


「早く食べないと冷めるわよ」


「おう、いただきます。」


イオルはそう言うとパンを食べはじめた。


「やっぱマリーの飯は美味いな。」


「そう?ありがとう。でもちゃんと朝食の時間に食べなさいよ」


「いや、朝食の時間って7時とか8時だろ?その時間は絶対寝てるから無理なんだよ。」


「いつもは、お昼まで寝ているあんたが早く起きるほうが珍しいもんね」


「そうなんだよ、何故か今日は目が覚めちゃってな。それでミレイアにも朝食作ってくれって頼んだんだけど仕事してるって断られたからマリーに頼みにきたんだ。」


イオルがそう言うとマリーは少し拗ねたように


「ふーーん。私のところに来たのはミレイアちゃんに断られたから仕方なく来たんだ〜」


「おいおい、何で機嫌悪くなってんだよ。仕方なくじゃねーよ、マリーの料理が美味いから頼んでるんだよ」


「…そ、そう。ならいいわよ。」


食事を食べ終えてからもマリーとしばらく話をしていたのだがマリーは仕事に戻らないといけないらしいのでイオルは食堂で別れた。



マリーと別れたイオルは、自室には帰らず王城内をふらふら歩いていた。


(ああ〜、する事ねぇなあ。どうするかなあ…)


イオルが王城の中庭の側を通るとちょうど日がいい感じに当たっており気持ちよさそうだったので


(少し、芝生の上でゴロゴロしていくか〜)


中庭に出ると音声と気配遮断の結界を張って目を閉じ寝転んだ。






「イオル様、こんなところで寝てないで起きてください。もうお昼ですよ」


いつの間にか寝てしまっていて気づかなかったが結界も解かれていて上からミレイアの声が聞こえる


「う〜〜ん。もう昼か〜」


眠そうな声を出しながらイオルが起き上がるとすぐそばにミレイアが立っておりその顔は少し機嫌が悪そうだった。


「何でこんなところで寝ているんですか、部屋に行ったのに珍しく居なかったので探したんですよ。結界まで張っていたので探すの大変でしたし。」


「ああ、そういえば結界を張ってたんだったな。ここに居たのは、ちょっとマリーに軽く飯作ってもらったんだよ。その後やる事なかったから気持ち良さそうだったから此処で寝てたんだよ。」


「…そうなんですか。ですがやる事無かったと言っていましたがイオル様には仕事が山ほどあるのですが」


「いや〜、珍しく早く起きたのに仕事なんてする訳ないじゃん。それに昨日盗賊退治しただろ〜。」


「それとこれとは関係ありません。仕事は盗賊退治の前から溜まっているものですので」


「まあそれは置いといて、ミレイアは昼食作ってくれたから呼びに来てくれたのか?」


「はい、そうです。昼食はイオル様の部屋に用意しておきましたので食べてください。」


「わかった、ありがとう。」


「どういたしまして、私はもう昼食を済ませたのでこれで失礼します。」


「そうなのか…。じゃあな〜」


ミレイアはそう言うと城の中に戻っていった。




イオルが部屋に戻るとそこにはミレイアが作ってくれた昼食が置かれていた。

ミレイアが作ってくれた料理はパンに肉をサンドしたハンバーガーのような物だった。


「おおっ!美味そうだな。」


イオルは少し前にマリーのご飯を食べたばかりにも関わらず美味しそうに料理を食べはじめた。



ミレイアの料理を食べ終わるとイオルは部屋から出て国王様のいる部屋に向かって歩きはじめた。


(昨日、盗賊退治したから国王様に数日休みをくださいって言いにいこう)


本当に休むことしか考えていない男である。


コンコン


「国王様いますか?」


「どちら様ですか?」


部屋の中から国王様の声ではない男性の声が聞こえてきた。


「宮廷魔導士長のイオルです。国王様にお話したいことがあり来ました」


「はあ…、またイオル様ですか。入っていいですよ」


「失礼しま〜す」


部屋の中に入るとそこには机の前に座っている国王様とその側で立っている初老の執事のモルドンがいた。


「どうしたイオル、昨日の盗賊退治の件か?」


「いやまあ、その事に関係する事ではあるんですけど…」


「どうかしたんですか?」


モルドンは少し訝しげに聞いてきた


「あの〜、昨日盗賊退治したじゃないですか、だから数日でいいんで休みを貰えませんかね?」


「イオル…ミレイアから聞いてるぞ、書類仕事を全くしていないそうじゃないか」


「いや…それはそうですけど…。でも昨日は盗賊退治したじゃないですか、森も守ったし少しくらい休みくださいよ」


休みを貰うまでは絶対に折れなそうなイオルに対して国王も諦めたのか


「はあ〜、わかった。では、3日ほど休みをやろう。」


「ありがとうございます!では、失礼します。」


急に元気よくなったイオルはすぐに部屋を出て行った。


「あいかわらずですね。イオル様は」


「そうじゃな、実力はあるのじゃがな。」


「まだ、あの件を引きずっているのですかね」


「そうかもしれぬな。まあ、仕方ないのかもしれんが。今は、まだ様子を見れやろうではないか」


「そうですね。彼を信じましょうか」










国王に休みの許可を得たイオルは自室に戻って明日からの休みをどうするか考えていた。


(ふーむ、せっかく公認の休みを貰ったし部屋でダラダラしてるのもなんだかなぁって感じだし。ちょうどいいから久しぶりに隣の都市にでも行ってあいつに会いに行ってみるか)



明日からの予定を決めたイオルは唯一の趣味と言っていい魔力を溜めることができる石魔石を組み込んだ自作の魔道具をいじりはじめた。




(うーむ、あとちょっとで出来そうなんだけどなあ…)


今、イオルが開発している魔道具は遠くの距離にいる相手と連絡をとれるような物を作っている。


(魔道具同士で声を届かせて出来れば映像もつけたいけどそれだと大きくなりすぎそうなんだよなあ…。それにどうやって相手を指定すればいいかもわからんし、やっぱ明日あいつに聞くしかないか…)


テレパシーを使えるイオルには必要なさそうな魔道具だが唯一の趣味なだけはあり魔道具を作っている時は活き活きとしていた。














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