番外.設定覚書その2 (※5/20 加筆・修正)

【その2 動植物編】

☆人類種


◇ヒューマン(並人種)

 地球の現生人類種(ホモサピエンス)とほぼと同様の外見や肉体構造を持つ存在。ただし、100人につき5~15人程度の割合で、「素質持ち(タレント)」と与ばれる、ある種の肉体的超人(フィジカルエリート)が生まれる。なお、素質持ちでない“普通の人”も、現代の日本人などと比べるとかなり頑健タフである(むしろタフでなければ生き残れないと言うべきか)。肌の色は白色人種と黄色人種の中間のような色合いの者がもっとも多いが、もっと白い者や黒い者、赤褐色の者なども存在し、それらは混在しているため、少なくとも肌の色による差別は存在しない。


◇ドラッケン(龍人種)

 “龍”とつくが、ファンタジーのリザードマンやドラゴニュートのような半人半竜的外見ではなく、むしろ通俗的なエルフに近い存在。外見的には並人と大差ないが、成長した龍人は両耳の後ろに小さな角が生え、足の爪も鉤爪状に変化する。寿命が長く(平均寿命は500歳程度)、知能が高くて身体的にも頑健、“咆哮ロア”、“顕鱗アムド”、“浮遊フライ”といった数々の特技を持つ……と、一見完璧超人のような種族だが、致命的に繁殖能力が低い。一応、並人とのあいだに子を成すこともできるが、生まれる子供は9割方並人になる(正確には表に出ない劣性遺伝として龍人の要素も継承はされており、隔世遺伝で龍人の要素の濃い子が生まれることも稀にある)。それでも同族同士よりは出生率は随分マシなので、子供を産みたい女性龍人などは伴侶に並人男性を選ぶことも少なくない。

 その寿命故か性質的にはのんびりした者が多い。繁殖率の関係で純粋な龍人は徐々に減少しつつあるが、並人との混血はそれなりにいるため、のんきな気性もあいまって、それを問題視している者は殆どいない。


◇ゾアン(獣人種)

 二足歩行し、道具や言葉を使いこなすが、外見的には犬や猫、猪などの獣と酷似している生物(ただし骨格や脳の容量などはだいぶ違う)。辺境などでは森の中などで小規模な集落を築いていることもあるが、町や街などの人里に出て、並人と共存しているケースも多い。よく知られているのは以下の5族だが、ほかにも鹿の獣人や牛の獣人なども少数ながらいると言われている。


◆ケトシー(立猫族)

 外見的には直立二足歩行する猫のような獣人。ただし、全力で逃走するときなどは四足状態になることも。イメージは「長靴を履いた猫」。決してア●ルーと呼んではいけない。二足歩行時の身長は1プロト弱なので、地球の平均的な猫よりはやや大柄と言える。

 獣人種の中ではダッシュ力に優れ、非常に勇敢。反面、飽きっぽい点があり、地味な反復作業にはやや不向き。また、暑い場所を好み、寒い場所は敬遠する。特技は「不死身」。無論、本当の意味で“不死”なわけではないが非常にしぶとく、たとえ強烈なダメージを受けて一時的に撤退しても、しばら休むと戦線に復帰してくれる。


◆コボル(狗頭族)

 直立二足歩行するビーグル犬のような獣人。決してス●ーピーではない(体色も白黒ばかりではない)。ケトシーよりひと回り大きい。四足状態でも動けるが、めったにならない。

 獣人種の中では持久力に優れ、(比較的)頑健。また、単純作業をコツコツやるのも得意。ただし、手先の“器用さ”では他の2種より劣る。ケトシーと逆に寒冷地向きで暑い地方は苦手。特技は「超嗅覚」。獲物の追跡や目的物の嗅ぎ当てなどに最適。危険を“嗅ぎつける”ことにも秀でているので、コボルの勘は軽視しない方がよい。


◆マンクス(小猿族)

 外見はニホンザルとよく似た獣人。ただし、尻尾が長く(半プロト位)、体格はケトシーよりひと回り小さい(身長0.8プロト前後)。ケトシーやコボルよりも四足状態になることが多い。

 獣人種の中では特に器用さに優れ、頭もいい反面、体力(とくにスタミナ)に乏しく、やや小心。アシスタントになるようなマンクスは、冒険心というより好奇心が動機なことが多い。特技は「樹上適応」。木登りが得意で、狩猟時にも木に登っての遠隔攻撃や援護をしてくれるほか、木の実の採集などにも役立つ。ただし、木のない場所では役に立たない特技でもある。


◆ボアドン(猪頭族)

 猪(ボアズ)をデフォルメして擬人化したような獣人。身長は1.5プロト前後とケトシーなどより大きいが、知能は低め(並人の4、5歳児くらい)で、手先もあまり器用ではない(棍棒は持てても、刀剣類はもてあます程度)。非常に悪食かつ貪欲で、常に餌を求めて棲みかの周辺を徘徊している。その獲物の対象には並人や他の獣人も含まれる。また、繁殖期の性欲も旺盛で、他に選択肢がないと(並人の男女含め)他種族の牡や牝とすら交わることがある(幸いにして混血などが生まれることはないが)。

 狩猟士が見つけた場合、問答無用で狩ることが許されている数少ない生き物である。


◆ガゴル(羽鬼族)

 灰色の硬質な肌と背中に蝙蝠のような翼を持つ獣人。容貌は並人に近いが口が大きく、頭髪がない。人間との関係は中立──というか、人間に関心を持っておらず、関わろうとしないというのが正解。身長は1.2プロト程度。背中の翼で一応飛べるが、あまり飛行能力は高くなく、高所からの滑空として利用することの方が多い。概して無口だが、知能自体は高め。手先もマンクスに次いで器用。ただし、その生態には謎が多い。

 人(狩猟士)とガゴルが遭遇したときはお互い「見なかったこと」にしてそのまま別れるのが普通。



◇生物種

 この世界における生物相は、数百年前の大災害を契機に“歪んで”おり、大災害前には(少なくとも自然には)存在しなかった新たな種類の生物が多数確認されているほか、既存の動植物も変異し、大型化する傾向にある。一般的にみられる大多数の“普通種”、より大型に変異した“大型獣(植物の場合は大型種)”、さらに巨大化した“巨獣”、普通種を持たない“怪獣”──の4つに大きく分類される。なお、巨獣に相当する植物は未確認だが、“怪獣”に相当する植物は、過去に2例確認されている。

 大型獣と認定されるには、「普通種の2倍(かつ1プロト)以上の大きさで、普通種より好戦的になっている」ことが条件。巨獣の場合はさらに大型種の1.5倍以上、かつ大型獣にない特殊能力を持つことが条件となる(例外はある)。


[動物]

◆バフズ<メガバフズ(大型獣)<ギガントバフ(巨獣)

 牛(正確には野牛)の系統の変異例。現代地球で言う南部牛をややスマートにしたような大きさ・外観の動物がバフズで、それをそのまま全長4プロトに拡大したような生き物がメガバフズ。さらにメガバフズの体躯をふた回り大きくして、角もより太く長く実用的(?)になり、攻撃性も増したのがギガントバフになる。ギガントバフは巨獣と目される。肉は食材、革は服飾・防具などの素材として利用価値が高いが、中身がトラス構造に近い角は使い所が限られる。


◆クニクル<ランプヘア<ホーンドバニー(大型獣)

 兎(野兎)の系統の変異例。体長40センチ前後で、見かけはニホンノウサギに近い種類がクニクル、頭部に瘤状突起を発達させ、体格もハスキー犬なみに大きくなったのがランプヘア、そして瘤のあった部位の骨がより発達し完全に“角”と化し、体格もツキノワグマ並に巨大化したのがホーンドバニー。ホーンドバニーは一応巨獣ではなく大型獣の範疇だが、新米が下級へステップアップする際の目安(これをひとりで楽に狩れないようでは実力不足)とされる。食材、革材としては比較的低位だが、さすがにホーンドバニーともなると、それなりの価値がある。


◆コモディア<グランディア(大型獣)<グレイディア(巨獣)

 地球で言う鹿に近い形態・生態の蹄獣種。頭部に枝分かれした2本の大きな角があり、平素は温和な性質だが、敵と判断した相手には頭突きや角を用いた攻撃などを仕掛けてくる(しかも意外に執念深い)。コモディアはニホンジカよりひと回り大きい程度の大きさだが、グランディアはヘラジカよりも大きく、巨獣に分類されるグレイディアともなると体長5プロトを軽く超える大きさにまで成長する。肉は脂身が少ないが味わい深く美味。革や角もそれぞれ加工素材として優秀なので、狩猟対象として需要は高い。


◆チニィマーント<メガマーント(大型獣)<ギガマーント(巨獣)

 カマキリに似た肉食の昆虫種。ただし、地球の蟷螂に比べると頭の顎部が大きく、反面、胴体がやや細い。チニィマーントでも体長0.5から0.8プロト(50~80センチ)程度の大きさがあり、メガマーントはほぼ人間大、ギガマーントともなると頭の位置が3プロト以上に達することも珍しくない。一見華奢に見えるが、その表面のキチン質の殻はきわめて堅固で、ギガともなれば生半可な刃物ははじき返す。また、あまり得意ではないが短距離なら空を飛ぶこともできるため、空からの強襲にも注意が必要。攻撃の主体は2本の鎌状前肢だが、接近した際には丈夫な顎による噛み付きも相応に脅威。食用素材としては一般には敬遠される傾向にあるが、実はメガ/ギガの前肢の筋肉部は焼くとエビのような味がして意外とイケる。また腹部をどろどろになるまで煮込んで濾過・加工したものは、スープなどに独特のコクを与える高級調味料となる。鎌を始め殻の部分は主に武器素材に利用される。


◆キャンサル<メガキャンサル(大型獣)<マグニキャンサル(巨獣)

 水辺の定番の生き物である蟹のなかで、特に大きく成長するものを指す。キャンサルは甲幅0.7~1プロト程度の大きさで、形状的にはイワガ二に近い(ただし体の色は臙脂に近い赤褐色)が、メガキャンサル、マグニキャンサルと大型化するにつれて脚が長く、ハサミも巨大化する傾向にある。マグニキャンサルの平均体高は4.5プロト、甲幅は2.8プロトに達する。体の大きさに比して食用可能な身は少ないが、よくしまっていて濃厚なカニエキスが楽しめて非常に美味。中腸腺カニミソや卵巣も通の味として珍重される。大型化すると多少大味になる反面、なぜか茹でた時の身が柔らかくなるため、別の味わいとして、こちらも優秀な食材。甲殻は火に弱いことを除くと衝撃・切断・貫通のいずれの攻撃にも耐性が高く、防具の素材として利用される。


◆ボアズ<メガボアズ(大型獣)<ギガントボア(巨獣)

 豚というか毛の短い猪のような雑食動物。ボアズは体長1.5プロトで、地球の豚と大差ない大きさ(むしろ小さめ?)だが、メガボアズになると一気に体長4プロト近くまで大型化する。角がない代わりに牙があり、突進速度も似たようなものなのでメガバフズと危険度は同等。ギガントボアも同様にギガントバフに匹敵する大きさ・強さだが、素材の有用性の点ではギガントバフにやや劣る。ただし、ボアズ~ギガントボアまで一貫して良質の食肉・食用油が採れるため、商店からの引きは多い。


◆クック<グランクック<クックルティモス(大型獣)

 鶏よりは家鴨に近い外形の鳥。食肉用のほか卵の需要も多く、この世界では珍しいことにクックは人里で飼育(と言っても金網で囲んだ庭で数匹放し飼いにする程度だが)されることもある。鶏や家鴨のようにほとんど飛べないわけではないが、体と翼の比率から、やはり飛ぶのは苦手(雉や雷鳥レベル)。一段階大きいグランクックは1プロト弱なので大型獣とみなされない。そのひとつ上のクックルティモスは、体高2プロト半で大型獣に分類される。主な攻撃手段はクチバシによる突つきと脚部によるキックで、グランクックによるものでも“運が悪いと非武装の人間が怪我する程度”で、ボアズ系やバフズ系に比べれば危険度は低め。他方、クックルティモスに関しては飛行可能なため危険度がはね上がり、その質量もあいまってメガボアズ・メガバフズと同等以上の狩猟難度を持つ(ただし、弓・弩などの飛び道具使いにとっては、油断しなければカモである)。


◆リグス<メガリグス<ギカントリグル(大型獣)

 ルノワガルデではポピュラーな昆虫種。バッタやイナゴの近縁種。普段は草原にいて辺りの草を食している。リグスはクルマエビよりふた回りほど大きく、メガリグスとなると体長0.5プロトを越え、さらにギガントリグルはホーンドバニーに近い大きさまで成長する。

 元が草食性に近い雑食性なので単体での危険度は低いが、メガリグスは複数(3~10体程度)で群れる傾向があり、また縄張りに踏み込んだ者へ体当たり攻撃する習性があるので、知らずに近寄ると思わぬダメージを受けることもある。

 ギガントリグルも同様の習性を持つうえ、体長が1.5プロト程度もあるため、より危険度は高い(……が、群れないので、実は逃げに徹すれば一般人でも割と切り抜けられる可能性は高い)。

 肉は可食だが、一般人からの需要は低め(意外に美味なのだが)。素材としてもギガントリグル以外は、あまり使用されない。


◆ラプタン<メガラプタン(大型獣)

 走竜種。尻尾も含めた全長2.5プロト前後の爬虫類で、発達した後肢と退化気味の前肢を持ち、後肢で二足歩行する(形状的には実在した恐竜ヴェロキラプトルに近い)。肉食性で、機敏な動きと噛みつき、数体からなる群れでの連携行動が脅威。反面、肉体強度的にはメガバフズ、メガボアズよりも大幅に劣る。肉は堅くで普通に焼いても食べづらい(弱火で長時間ことこと煮れば食べられる)。素材としてもさほどランクは高くないが、鱗の下の皮膚の伸縮性が高いため、衣服などで一定の需要はある。


◆ヴォラピステス(大型獣)

 軟骨魚種。「飛鮫」という別名通り、その姿は全長は2.5プロト前後のホオジロザメと酷似しているが、トビウオのような大きな胸ビレを持ち、海面から飛び出して滑空が可能。これによって、海面で魚を獲ろうとする鳥類や海獣、時には漁船すらも狩りの対象として噛み千切る。水中・水上で自在に動けない人間にとっては厄介な相手……だが、実は一定ランク以上の狩猟士なら、それほど苦労せずに狩ることが可能。ただし、食材・素材としての価値はあまり高くないため、もっぱら駆除の報酬のために狩ることが多い。トゥワード湖では大型獣扱いのヴォラピステスまでだが、海に行けばさらに大きく凶暴な巨獣相当の同系統種がいるという噂もある。


◆セルビオラス

 「毒山竜」の異名を持つ怪獣デーモン。外見的には「タコの体色を紫色にして、体長30メートルくらいまで拡大し、触手の代わりに細長い四肢と尾、頭を付けた」ような印象。なお、タコに似ていると形容としたが、ちゃんと鱗や骨はあり、爬虫類ないしそれに近い脊椎動物に属すると推察されている。草食性であり、その動き自体は比較的緩慢ではあるが、怪獣の中でも指折りの巨体と、それに伴う高い体力や膂力は決して侮れない(高品質な装備に身を包んだ上級狩猟士でも、当たり所が悪いと一撃で瀕死ないし即死)。また、猛毒のブレスを吐くほか、爪や牙にも毒があり、さらに尻と目される場所から非常に臭く嘔吐を催すガス(おそらく屁)を噴出するという、質量兵器兼化学兵器とも言うべき“歩く災厄”。反面、その鱗や骨は剛性と弾性が高いレベルで両立された非常に頑丈な素材となるため、ベテラン上級狩猟士なら、一度は挑んでみたい相手だともいわれる。


◆リヒザード(大型獣)

 別名「蛭蜥蜴」。全体的なシルエットはトカゲに似ているが、実は爬虫類ではなく、ヤツメウナギなどの円口類の近縁種らしい(顎がない・骨格が未発達・四肢に見えるのは硬化した表皮・原始的な肺はあるが皮膚呼吸にも頼っている)。全長2.5~3プロト、口腔部の直径は半プロト前後で、自分より大きな動物の体表に食いついて体液をすするのが主食だが、口より小型の動物は丸呑みする(ただし消化器官が未発達なのでエネルギー効率は悪い)。身長1.5~2プロト程度の人間は、微妙に獲物の対象からは外れているので積極的に襲われることはないが、人から見てかなり気持ち悪い姿をしているため、反射的に攻撃されることが多く、そうなると当然反撃してくる。視覚は弱いが聴覚と嗅覚に優れ、暗闇に潜んで獲物を待つスタイル。仮初の四肢は大した力を持たない代わりに、蛇などと同様に対象を締め付けでダメージを与える。ちなみに、普通種は「リヒズ」と呼ばれ、体長0.5~1プロト前後だが、特徴や習性はほとんど変わりない(そしてこの大きさだと人は吸血対象となる)。食材としては珍味の類いで需要は多くないが一応食べられる(あまり美味ではない)。素材としては皮が衣類などに利用できるほか、独特の弾性を持つ背骨が様々な細工類に原料として利用される。


◆ギガントアショトル(巨獣)

 別名「水妖守」。サイズを度外視すれば、その形状は“青いウーパールーパー”そのもの(要するに幼形成熟したサンショウウオ)。ただし、体高3プロト、尻尾も含めた全長は7プロトにも達する大きさまで成長する。また、地球のウーパールーパーに比べて後肢が非常に小さく、下半身を引きずるようにして移動する。肉食だが動きそのものは比較的鈍重。獲物や敵には酸の唾を吐いてダメージを与え、動きが鈍ったところを全身で押しつぶす作戦をとることが多い。ただし、体の再生能力が並外れて強く、足の一本を切り落としても下手すると数刻くらいで生えてくる。当然傷の治りも早く、さらに体組織の構造上、鈍器に対する耐性が非常に高く、ハンマー使いの天敵。切断系の武器も、表皮を覆う粘液で切れ味を落とされるため、あまり相性がよくない(貫通系の武器は効く)。性格は、巨獣としては比較的温和だが、それでも攻撃したり縄張りに踏み込んだりすれば、当然怒る。肉は一応可食だが、さほど美味しいものではなく、需要はほとんどない。皮は耐水性の布素材、体液は回復系薬剤の原料として珍重されるほか、骨も素材として様々な局面で利用される。



[植物]

◆フラックス

 別名「汎用雑草」。生命力旺盛な多年草で、おそらくシソ科の植物が変異巨大化(といっても元の2倍程度だが)したモノと思われる。葉は食用・薬用、茎は繊維を抽出して利用される。また、実には弱い毒性があるものの、人間にはそれほど大きな影響がないので、実を干したものを火にくべることで除虫剤として利用できる(煮こぼして毒性を弱めたものを虫下しとして食べる地方もある)。


◆イズン

 温帯から冷帯にかけて生育する広葉樹。秋に生るその桃色の果実が食用になり、美味なので積極的に栽培されるほか、樹皮から解熱剤が精製でき、また、葉から発生するガスが果実の成熟を促進することも知られている。ただし、木材としてはやや脆く、建材などの用途には向かない。なお、イズンの実は、冷暗所で保存すれば非常に長持ちするので、春先から初夏くらいまでは(多少割高だが)普通に市場にも出回る。実を絞ったジュースは、さまざまな飲み薬の(苦味中和剤を兼ねた)媒体としても用いられる。なお、人の手で植えられたものより野生のものの方が圧倒的に美味という、農家の努力を嘲笑うような植物(というか、この世界の可食作物は大概そうである)。


◆ネブランジェ

 温帯から亜熱帯にかけて産出する柑橘類で、樹の大きさは4メートル前後。秋から初冬に熟す果実は濃いオレンジ色で大人の拳ほどの大きさ、味はデコポンに近い。地理的条件から、ルノワガルデ内では殆どの地域で成育可能で、街路樹代わりに植えられている街もある(その場合、実は街の人間がもいで食べることが許されているが、金銭売買しないのが暗黙の了解)。生のままでも美味だが、イズンと異なりあまり日持ちしない(冷暗所でも収穫から1ヵ月が限界)ため、ジャムや蜜漬け、干し果などにされることも多い。絞った果汁は、そのまま飲むより水や酒で割ることが多い。


菫葉菜バイオレットリーフ

 青菊科の多年草で、温帯~冷帯域ではポピュラーな植物。パッと見的には「地球のものよりふた回りほど大きい紫キャベツ」だが、食感はレタス、味は小松菜に近い。野に自生もしているが、この世界の植物にしては珍しく人間が栽培しても味がほとんど変わらないため、広く人里で栽培される。ただし、近年の研究では、有益な栄養素はあまり多く含まれていないと言われている。


◆バクレツダケ

 日本で言うキツネノチャブクロ(ホコリタケ)に似た、赤褐色のキノコ。大きさは1ミプロ(≒5センチ)程度。胞子が咳止めの薬になるが、それ以上に成熟した個体に強い衝撃を与えると爆発することで有名。と言っても、たとえば人が誤って掌で押し潰したとしても、ひとつ爆発したくらいなら「痛い!」程度(成人女性に平手打ちされたレベルの痛み)で済む。問題は、このキノコはたいてい群生しているので、その中でひとつ爆発させると一緒に生えている他の個体も当然爆発し、状況によっては洒落にならない事態を引き起こすことも。若い個体はよく洗えば食べられないこともないが、味も香りも薄いので、スープや炒め物の(嵩増しを兼ねた)具に利用される程度の需要。ちなみに狩猟士は、このバクレツダケを原材料にした錬金製品の“爆裂弾”を狩りに用いることもある。

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