第9話 お尋ね者、真相を知る。



「要は、姐さんがめられたって事だろ?」



 ダラムが苦虫を噛むような表情で、そう言った。


 今回の一件は、何者かによって仕組まれた事だった様だ。



「俺が悪いんです。知っていながら、姐さんに黙ってて……それで……」



 先程からヤヌックは俯きながら、独り言の様に呟いている。



「何言ってんねん。ヤヌックお前うちの為に体張ったんやろ? 男が泣くなや」



 私はヤヌックの頭を乱暴に撫でてやった。




 ***




 事の始まりは私がルクア傭兵団を壊滅させた所から始まるらしい。


 平穏な街に突如、前代未聞の粗暴者チンピラが現れた。


 それにより、バーウィッチのお偉いさん方は大混乱になった様だ。


 その際、お偉いさん方の意見は二つに割れたらしい。


 『友好』か、『排除』か。


 その結果に大きく関わったのが、私の考えだった。


 私がこの街の為に力を貸すのであれば、『友好』的と判断。


 そうでない場合は、危険要因として『排除』するということだった様だ。


 そして、私は協力それを断った。




 ***




食事会あのときから様子がおかしいと思ってたんですよ」



 ジョゼは御三方が酒場に来たときから、その線を疑っていたらしい。


 そしてその疑惑を決定付けたのが、私の懸賞金だった様だ。



「あんなすぐに姐さんに懸賞金が付く筈がないんですよ。だとしたら初めから姐さんには、そういう疑いが掛けられていたと考えるしかなかったんです」


「お、俺は何も知らなかった……」



 ジョゼの話にダラムは肩を落とす。



「それで良かったんだよ。俺ら全員が色々探ってたら、もっと早く向こうに勘繰かんぐられてたぜ」


「俺も最近、妙な動きがあるのを知って、調べてた所だったんですぜぇ。それが逆に利用されちまうなんて……」



 再び落ち込むヤヌックに、ジョゼは肩を叩く。



「いや、これで確証が得られた。ありがとな、ヤヌック」



 そしてジョゼは再び私と向かい合い、神妙な面持ちで口を開いた。



「姐さん。今すぐ、この街を…「嫌や」」



 ジョゼの言いたいことは何となくわかった。



「なッ!? 今なら、問題なくこの街から出られます。それに資金も十分にある! ほとぼりが冷めるまで…」


うちの話が聞こえんかったんか?」


「いえ、でも…「嫌や、言うてるやろ?」」



 私の意見にジョゼは納得出来ないのか、何度も食い下がる。



「なんでうちが尻尾巻いて逃げなアカンねん」


「…………」


「それに喧嘩売られたんは私達うちらやで?」



 私の静かな怒りに子分どもは黙って話を聞いていた。


 しかし、再びジョゼが口を開く。



「近々、冒険者を集めて、あねさんの討伐隊が組まれているらしいです」


「そんなん全員倒したらええやろ」



 私の言葉に全員が驚きの表情を見せた。



「いくら姐さんでも、冒険者相手に…」


うちが負けるってか?」


「いや、でも……」



 私が睨みを利かすと、ダラムは黙った。



「その次は王国軍が来るかもしれませんよ?」


「それも倒したらええやん」



 迷いのない私の言葉に、全員が言葉を失っていた。



 …………。



「ほな、うち戦争けんかの準備でもしに行くわ。これで、お前らは好きなだけ飲みぃ」



 私はそう言って、テーブルに金貨を1枚置き、店を後にした。



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