バックストリート・フィッシング

まるで魚が水面で口をパクパクさせるように、僕の帰り道は狭い路地裏の中。明日への不安に溺れぬよう、タバコをむやみにほっぺたから喉に向けて頬張っていく。


例えばあの民家の明かりのついた二階からこの路地裏を見下ろせば、僕はまるで川に生きる魚のようではないだろうか。


視野が狭い魚。生臭い魚。子孫を残す魚。

色んな魚がこの道を無様に進んできたのであろう。

こんな生活は嫌だと思っても口にできない生き物に生まれてしまったことが事実。

湿度の中で張り付くスラックスは二本の脚をくっつけて尾びれを作り上げる。


もしかしたら川魚にとって釣られてしまうことは絶望のエンドではなく救いのゴールなのかもしれない。何度生まれ変わっても川魚なのだとしたら。運命にさよならをできるチャンスがこの帰り道にあるのかもしれない。


誰か僕を釣り上げて、一瞬でもいいから夢を叶えてくれないか。今日も煙をあげて僕は思う、「ここにいるよ」と。


釣り上げられるために、泳ぎ進む。路地裏。


生臭い川の中、水面を見上げる、魚。

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