エア・ウォーカー1975

森田

第38話 百貨店を守れ!

大きな建物。

大型百貨店のようである。

『セール』の幟が付いたバルーンが浮かんでいる。

百貨店の内部、豪勢なショーケースが映される。

店内、人混みの中を歩くカナンとマグ。

カナンの買い物に付き合わされてマグはヘトヘトの体。


「トホホーイ!姐サン!待って欲しいでヤンス!」


「もう!ウスノロなんだから!置いてってしまうわよ!」


「そりゃないでヤンス〜!トッ!ホッ!」


マグがモタモタと両手に抱えた山積みの小包を崩しそうになる繰り返しのカットが60秒近く続く。


「トッ!ホッ!」


「オホホ、オホホホホ。おかしいわ」


「トッホッ!ヒェー!」


「オホホ、オホホホホ」


ジリリリリ。

その時、スピーカーから警報ベルが鳴る。


『皆さん、百貨店上空に飛獣が現れました。直ちに避難してください』


パニックになる人々の矯正、バタバタとした足取り。

百貨店の外にカメラが移る。


「あれを見て!」


上空を指差すカナン。

巨大な黒い1つ目のタコのような飛獣が百貨店の上で無数の触手をうねらせている。


「どひぇー!」


コミカルな動きで尻餅をつき、小包を地面に崩すマグ。


ガシャーン!

飛獣はガラスを突き破り、触手を店内に突っ込む。

ショーケースの中のネックレスやドレスに触手を絡ませ、盗み出していく。


「大変だわ!基地に戻りましょう!」


「ガッテンでヤンス!」


バタバタと走り出すカナンとマグ。


一方その頃。

空中悪魔城の遠景が映し出される。

おどろおどろしく、刺々しい岩の塊が宙に浮かんでいる。

背景の暗雲で雷が鳴る。

デビル皇帝の笑い声。


「ハハハハハハ。大型百貨店を襲撃し、金目の物を盗み出し我々の資金とするのだ」


デビル皇帝、玉座に座って青黒い顔を歪ませ笑っている。

将軍の笑い声でヒキ。


場面は切り替わり、スカイバトル基地の近未来的な外観。

BGMなどはない。

(基本的にはない。)


「何っ!それは本当かい!」


汗を垂らしている柊アリア。

緊迫した表情。

体格がよく、顔は濃く、眉毛が太い。

場所はスカイバトル基地内の近未来的な廊下。


「みんな!今すぐ出発だ!」


振り返るアリア。

犬飼チヒロ、ニヒルに乾いた笑いをこぼして首を振る。


「俺は反対だぜ。大型百貨店なんて、金持ちの威張った奴らのための物さ。そんな奴らのために働きたくねえ!」


「何を言うんだ!チヒロさん!」


「おいどんも、反対でゴワスな」


憮然と腕組みする山上タイガ。


「タイガさんまで!」


「そうよ!その通りだわ!私たちが戦わなくてもいいのよ!」


作画ミスで2人に増えるカナン。


「アワワ……アワワワ……」


アワアワしているマグ。

コミカルさを強調した動き。


ぐぬぬ、という表情のアリア。

デーン、という重苦しいSE。


「私たちだけで戦うしかなさそうね」


いつの間にかアリアの背後に立っている浦賀ササメ。


「ああ、それしかないようだ」


頷き、出口に駆け出すアリア。

振り返り、4人の方を見る。


「みんな、僕は飛獣と戦いにいく。それがスカイバトル隊の使命だからだ。みんなもそれが分かったら、僕らを助けて欲しい」


廊下から立ち去るアリア。

クク……とニヒルに笑うチヒロ。


「スカイバトラー・ゴー!!」


コックピットで赤いスイッチを入れるアリア。

シューッ。

滑走路を飛び出していく丸っこい戦闘機、スカイバトラー。

いつもは6機で出動するが、今回は2機だけなので作画バンクに不自然な間が空いている。


勇ましいBGMと共に空飛ぶスカイバトラー。

やがて、百貨店に取り付いた飛獣が見えてくる。


「スカイウェーブ!!」


青いスイッチを押すアリア。

みょんみょんしたエフェクトが発射され、ビババ、と飛獣にぶつかる。


「グォオ!」


のたうつタコ飛獣。

怒り狂ったように触手を振り回す。


「キャアーッ!」


触手の1つに捕まるササメのスカイバトラー。


「ササメさん!」


触手に振り回されるスカイバトラー。


「グォーッ!グルルルル!」


「アーッ!アアーッ!キャアーッ!」


「ササメさん!」


触手に振り回されるスカイバトラー。


「グォーッ!グルルルル!」


「アーッ!アアーッ!キャアーッ!」


「ササメさん!」


触手に振り回されるスカイバトラー。


「グォーッ!グルルルル!」


「アーッ!アアーッ!キャアーッ!」


「ササメさん!!」


冷や汗をかくアリア。

触手を躱すので精一杯。

操縦桿を握りしめる。


「スカイウェーブ!!」


その時、別方向からみょんみょんとした光線。

ササメのスカイバトラーを捕まえている触手を焼き切る。

ハッ、とした表情のアリア。

向かってくるチヒロ、タイガ、カナンのスカイバトラー。


「チヒロさん!みんな!」


「金持ちは気に入らねぇが、仲間がやられるのも見ていられねぇぜ!」


ニヒルに笑うチヒロ。


「よぉし!スカイフォーメーションでトドメだ!」


アリアの号令で、5つのスカイバトラーが1つの火の玉になる。


「スカーーーイ!フォーーーメーーーション!!」


火の玉の体当たりが、飛獣を貫く。

激しい爆発。

激しい爆発。

そして激しい爆発。


空中悪魔城でそれをモニタリングしていたデビル皇帝、椅子の手すりを殴りつける。


「ぬぅうーッ。スカイバトル隊め。またしても邪魔をしおって!次こそは〜〜!」


悪魔城からカメラが引いていき、百貨店の外観がフェードイン。

隊員たちの笑い声が響いている。


「しかし中々、百貨店も悪くないじゃねえか。ハハハハハ」


ワイルドに笑う犬飼チヒロ。

その周りで他の隊員たちも笑っている。


「オーイ、待ってくれでヤンス〜!」


オタオタした足取りで山積みの小包を抱えて5人を追いかけるマグ。


「ヨッ、ホッ、あら〜〜」


コミカルな動きで小包を地面に崩すマグ。


「もう、マグったら。オホホホホ」


「エヘへへへへ」


「ハハハハハハハハハ」


ファー、ファー、ファー。

百貨店の外観からカメラが引き、暗転。







「うわぁぁぁあッ!!」


俺はベッドから飛び起きた。

なんだか、とんでもない悪夢を見ていた気がする。

額の汗を拭いながら、周囲を見回して確認する。

ここは対空警邏の兵舎の205号室。

俺の、真鍋マグの部屋だ。

断じてスカイバトル基地ではない。


俺は息を落ち着かせて再び寝転がり、天井を見上げた。

そして誰に対してでもなく、1人呟く。




「…………ヤンスってなんだよ」



おわり

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エア・ウォーカー1975 森田 @morimorita

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