第24話高価なプレゼント

19-24

和歌山から帰りの車で晶子が「二年程前にデリヘルの事を書いて投函した人は、十数年も経過してから、嫌がらせをした人ですから、充分恨みが続いている可能性が有りますね」

「そんなに執念深い奴が居るのかな」

「よし、二回以上麻由子を呼んだ客のリストを東京で調べて貰おう」

「四ヶ月間に三回以上の客を調べて見よう」

「和歌山の警察に他は任せて、我々は過去を探しましょう」

こうして、各警察の捜査が分担で開始された。


数日後品川の警察から、二度以上麻由子を呼んだ客のリストが届いた。

殆どが偽名だが携帯番号は隠す事が出来ないので、警察の権限で所有者リストが判明して、多い客は五回も麻由子を呼んでいて、それも兵庫県の姫路の人間だ。

「多田誠一、この男は五回も客として来て居る、しかも地元だ、怪しい」山本が言うとリストを見て晶子が「玉岡健太って人も三回、和歌山ですよ、この人あの脅迫文の名前では?」

「他にも三回以上が六人もいますね」

「麻由子は美人で、男受けするタイプだから、若い時ならもっと綺麗だったのだろう」

「二回以上の客を入れると、十五人ですか」

「関西も半数いますね」

「十五人を虱潰しに調べよう、取り敢えず多田と玉岡から調べよう」

三人は各警察署の応援も得て捜査を始めるが、人質の命の問題が有るので、簡単には運べないのだ。

このリストに徹は入っていなかった。

何故なら、最初の麻由子が行った時は間違いで行ったから、別人に成っていたのだ。

三度目以降は熱海温泉に個人的に誘われたので、品川ナイトインブラックでは一度の利用と履歴が残っていた。

「森本健一って人も三度の利用ですね、大阪の人」

「似ているな、ビラの名前に!」

兵庫県警は真三の過去でトラブルが有るか?も調べる事にして、役所に入る前から役所でのトラブルを調べ始めた。


和歌山県警は渡辺の協力で、犯人のモンタージュ写真の作成に乗り出して、姫路警察ではその写真と車、当日の凜の服装の三点セットを写真にして、姫路城の近辺に掲示して過去の目撃者の捜索を始めた。


和田達はデリヘルのリストを持って麻由子の元を訪れた。

最初は迷惑そうにしていた麻由子が、遠い過去を思い出して「別に、トラブルは無かったと思いますよ」

「五回も呼ばれたお客さん、本名は言えませんが、偽名は太田さんと云う名前ですね」

「三十代後半の方ですね、関西人で血気盛んな人だった記憶が有ります」

「顔覚えていますか?」

「いいえ、バイトの期間に会った人で覚えている人はいませんね」

「今、二回以上呼んだ客を捜しています、何か誘拐に関係が有るかと思いまして、南田さんには嫌な思い出でしょうが、何か思い出して貰えれば連絡を下さい、細かな事でも構いませんから」と言うと晶子が「お客さんに何か貰った事有りませんか?プレゼント、指輪とかネックレスとか高価な物」

麻由子はしばらく考えて「ネックレスを頂いたお客様が一人いらっしゃいました」

「それは高級品ですか?」

「はい、高いと思います」

「今、お持ちですか?」

「はい」

「少しお借り出来ませんか?」

「良いですが、そのお客さんが犯人ですか?」

「いいえ、参考までにどれ位の物をプレゼントするのかと思いまして」

「判りました、私も高価だとは思ったのですが、高いと言っても正直価値は判りませんでしたから」そう話すと奥に入って、ケースに入ったネックレスを持参した。

晶子が早速ケースを開くと「わあー、綺麗で、高そう!」と言う。

「このお客さんで何か覚えている事は?」麻由子は店外デートを思い出していたが、それを喋ると危険だと最初に言われたので誤魔化した。

最初に百合に警告された言葉が脳裏に残って「風俗の仕事は裏の組織が絡んでいるから、規則が厳しいから気をつけて働いてね、客と個人的に付き合う時は絶対に露見しない様に注意するのよ、怪我させられて、一生困るからね」。。。。。。。。

「三回程会いました、確か名前はもり。。。。だったか?」と名前までは思い出さなかった。

ネックレスを大事そうに晶子が持って、三人は麻由子のマンションを後にした。

「そのネックレスは高いのか?」

「高いと思いますよ」と晶子が言うと山本が「目は確かなのか?」と笑った。

帰りのフェリーの中で、姫路警察の田所がビックニュースを電話で伝えてきた。

「和田さん、驚かないで聞いて下さい」

「何だ、犯人が逮捕されたか?」

「違いますが、デリヘル五回の多田誠一ですが、役所の人間でした」

「えー、真三の同僚なのか」

「はい、今では部長職ですが」

「この事件を知っていた?」

「多分、テレビにも雑誌にも出ましたから、知っていると思います、どうしますか?」

「周辺を探してから本人に聞いて見る事にしましょう」

和田刑事は意外な接点を見つけて事件が真三にも関係が有ったのかと考えた。


翌日姫路警察に姫路城の前で撮影した写真に、偶然写された子供と男の後ろ姿がモンタージュの写真の服装に似ていると通報が届いたのだ。

田所と藤井が待ち焦がれている時に、和田刑事達が姫路署を訪れた。

「班長、良い処に来られました、写真が出たのですよ」

「何の?」

「姫路城の前の土産物屋の近くから撮影した写真に、凜ちゃんと犯人らしい男が撮影されていたのですよ」

「おお、それは大きな発見ですね」

「もうすぐ、ここに持って来てくれます」

「一気に解決ですかね」

「不思議と防犯カメラの画像が無かったですからね」

和田達は多田に会う為にやって来たのだが、新たな証拠が出れば会う必要がない可能性も有る。

大阪府警には森本健一の調査を和歌山県警には玉岡健太の調査を依頼していた。


しばらくして姫路に住んでいる人が、写真を持ってやって来た。

写真を見て「間違い無い、日時も合っている、後ろ姿だが、凜ちゃんだ」

「誘拐が確定しましたね」

写真を大きくして何か見つかるか?警察は持参した人に当時の様子を尋ねたが、この写真は写している最中に肩に誰かが当たって、別の場所が写ってしまった物で、何も記憶に無かった。

写真で興奮しているのが終わると、同時に晶子の携帯が鳴って「えー、高いのですね」と声が響く。

ネックレスの話だと和田は直ぐに判って「誰が買ったか判るのか?」と横で叫んだ。

電話が終わると晶子が「あの、ネックレス今では八十万はするらしいです」

「買った人間は?」

「販売元が現在は無いそうで、判らないそうです」

「そんな、高価な物を贈るか?デリヘルの客だろう?」と驚く和田達だが、晶子が「それ程、麻由子さんを愛していた。。。。。?」とぽつりと言った。

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