第20話捜査会議

 19-20

加藤一次の元奥さん、当時の名前は加藤純子数年前に一次と離婚。

原因は妻純子の実家で犯罪者が出たのが原因で、清水家の次男清水宗平が幼女誘拐で逮捕されたのが原因だった。

翌日神戸の捜査本部で会議の席上発表された。

①加藤一次の元奥さんが清水純子

②純子の兄の次男が宗平で幼女誘拐を起こして逮捕されて、数年前に刑務所を出ています

③加藤さんには子供が無くて、妹が一人居ましたが亡くなられた為に妹の子供の長谷川昌子が相続しています。

東京住まいで殆ど地元には帰っていません。

④清水宗平は現在66歳、現住所は不明です。

⑤清水宗平の風貌は禿げ頭、三年前に該当の車を買っています。

「意外な人物が出て来たな」と小南捜査課長が言う。

「加藤さんには、恨みを持っていた様です」

「何故だ」

「自分の事が原因で、叔母さんを離縁していたからです」

「成る程、それなら住所も知っているな」

「あの夜間救急センターに行って、清水の写真を見て貰え」

「はい」

「指名手配しますか?」

「いや、先日の失態が有るから、もう少し容疑が確定してからにしよう」一度貼られた汚名は中々消えない。

警察も殆どの人間が清水の犯行だと考える様に成っていた。


翌日の夜間救急センターに写真を持っていった刑事がいきなり「この写真に似ているでしょう、この男は過去にも幼女誘拐で逮捕された経験が有るのですよ」

「は、はい似ている様な、似てない様な」と答える渡辺に「車も同じ車種を三年前に、中古で買っていますよ」と半ば認めさせようと必死に話した。

それでも曖昧に答える渡辺に「この清水は幼女の悪戯目的なのですよ、早く助けないと、凜ちゃんが危険です」と認めさせる誘導の話を次々と出してくる。

渡辺は写真を見たが確実にこの清水が、あの男森田とは異なると思っていた。

決定的に違ったのは、森田の目だった。

あの時の目は心から子供の病気を心配していた目だったから、優しさと心配の眼差しが今でも渡辺由希乃の脳裏に残っていたから、答えられなかったのだ。

曖昧な返事を聞いて、県警の二人の刑事は帰って行った。


同じ日和田刑事達は小豆島に聞き込みに行っていた。

それは清水宗平と小豆島に繋がりが無かったから、小南が何か有るに違い無いと三人に調査に行かせたからだ。

前田佃煮に行って、清水宗平の事を尋ねたが誰も知る人は居なかった。

三人は坂田の実家も調べる事にして向かう。

「南田夫婦は別居していますよ」

「二人にはショックだっただろう、子供が帰らずに奥さんが昔売春していたと聞かされたら驚くよ」

「警察だけで、終われば内密だったが、あの工藤がマスコミに暴露したから、二人は絶望だろうな」

「網干の家に旦那は時々帰っているが、奥さんは長男を連れて、ここに居るらしいですよ」

「もう修復不可能ですかね」

「班長が同じ立場でしたら?」

「恐い質問だな、私も絶えられないかな」と言うと「男は遊ぶのに、許せないの?」

「浮気と仕事は違うでしょう」

「でも世の中、内緒で今も生活している夫婦は多いでしょうね」

「あの事件で、肝を潰した奥さん多いのでは?」

「そうですよね、世間に風俗の数を考えると何人麻由子さんと同じ人居るのか?判りませんね」と山本が言うと晶子が「山本さんもよく調べて結婚した方が良いわよ」と笑う。

刑事三人がその当人の麻由子に久々に会おうとしていた。

(瀬戸の華)に到着して先日の誤認逮捕を改めて謝罪して、麻由子の住んでいるマンションの場所を尋ねた。

母麻子は大変ご機嫌が悪く、娘にも警察にも、世の中総てに嫌悪感を持っているのが手に取るように判る。

自分の娘が蒔いた種とは言え、世間に笑いものにされて、幸せな家庭は壊されて、麻由子の亭主真三は娘の無事を願う気持ちも薄れた状態に成っていたのだ。

近くのワンルームマンションに息子真とひっそりと暮らす麻由子は、化粧もしないで和田達を迎え入れた。

「安易な気持ちで、風俗で働いた事を後悔しています」と神妙な面持ちで語った。

「御主人とはお話をされましたか?」

「いいえ、あれから全く連絡は有りません」

「そうですか、今日はこの写真を見て頂きたいと思いまして」と清水宗平の写真を差し出した。

麻由子は少しの間写真を見て「知らない人ですね」とぽつりと言った。

「この男は、幼女誘拐で過去に逮捕歴が有りまして。。。。。」と和歌山の夜間救急センターの一件とそれに関連する事柄を話した。

「そうですか、この人が家庭を壊した張本人ですか?」と再び写真を見る麻由子。


しばらくして麻由子のマンションを出た晶子が「人相変わっていましたね」と言うと「化粧もしてなかったから、別人に成っていましたね」と山本も言う。

「それより、思い詰めなければ良いのだが」と和田がぽつりと言った。

「しかし、清水宗平と小豆島の関連は出ませんね」

「和歌山県警が清水を追っているらしいが、中々所在が判らないらしい」

三人は一度報告の為に神戸に戻るフェリーに乗り込んだ。

このフェリーに前田佃煮の運転手、荻野が偶然乗船して和田達の後ろの席に座って居た。

「結局この清水と前田佃煮も坂田の家も何も繋がりませんね」と山本が言った言葉に後ろで眠る予定の荻野が後ろから写真を覗き込んで「小島だ!」と口走った。

驚いて振り返る山本と晶子「貴方だれ!」と叫ぶ二人。

そこに缶コーヒーを持って和田刑事が戻って来て「どうしたのだ?」

「いや、この方がいきなり、私達の後ろから小島って、叫んだので驚きまして」

「私達は警察の者です、何か気に成る事でも?」と和田が荻野に尋ねる。

「いや、警察の方とは知らなかったですが、前田佃煮と聞こえたので、起き上がって写真を見たら小島の写真が目に入ったもので」

「えー、今、小島と言いました?」

「はい、その写真の男性は小島ですよ」

「何処の小島ですか?」

「私がよく行く、一杯飲み屋に来る男ですよ」

「それは、何処に在るのですか?」

「私の勤めている、工場の直ぐ近くですよ」

「えー、土庄港の近くですか?」

「そうですよ、ここ最近は見てないですよ、半月程前、可愛い女の子を連れて、昼間歩いていたのを見たけれど、その後は見てないかも」

「幾つ位の女の子ですか?」

「四~五歳だったかな?」

三人の刑事は話を聞いて、もう戻れないフェリー、坂手港を残念そうに見ていた。

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