クッキー断ち。。。

紀之介

どんな神様?

「葉月がしてる、クッキー断ちの 願掛けって…」


 如月さんの言葉が、途中で遮られます。


「願い事を人に教えたら 叶わなくなってしまうので、申し訳ありませんが 教えられません。」


「いや…願い事の内容とかは、どうでも良いんだけど。」


「私のお願い事は、どうでも良い事じゃありませんから!」


「…クッキーを食べるのを葉月が我慢すると、誰が願い事を叶えてくれる訳?」


「神様です。」


 何か言いたげな如月さんを、葉月さんは睨みました。


「神様なんか いるはずがないとでも、仰るつもりですか?」


「そんな事、言うつもりは無いけど…」


「─ じゃあ、何でしょう?」


「因みに葉月は…何で クッキーを食べるのを、我慢する事にしたの?」


「私が大好きな 食べ物だからです。」


「で…クッキー断ちをした結果、願い事を叶えてくれるのは どんな神様?」


「…え?」


 突然 葉月さんが、シドロモドロになります。


「ク、クッキーの神様です…クッキーの神様が、私が好物を一生懸命我慢する姿に感銘を受けて、願い事を叶えて下さるんです……」


「でもさぁ…」


「な、何ですか!?」


「─ 願い事を叶えてくれるのが クッキーの神様だったら、クッキー断ちって まずいんじゃないの?」


「へ…?!」


「仮に クッキーの神様がいるなら…それって、世界中で より沢山のクッキーが食べられる事を、推奨する神様の様だったりしない?


なのに クッキー断ちなんて言う <クッキーを食べない努力>なんかしたら、神様の意向に沿わない気が──」


「…願掛けのクッキー断ちが、神様の意向に沿わない……」


 自分が思いもしなかった理屈を聞かされ、ショックを受ける葉月さん。


 これ以上追求すると、面倒くさい事になりそうな気がしだした如月さんは、話題を変えようと試みます。


「そう言えばさぁ…」


「わ、私…クッキー断ちは 止めます。」


「─ は? 願掛けは、もういいの?」


「それは、続けます!」


「どうやって…」


「とにかくクッキーを食べて、それでクッキーの神さまのご機嫌を取って、願い事を叶えてもらうんです!!」


「─ それって…単なる好物の 大食いだよね?」


「神様に 喜んで貰うためですから、仕方ありません!!!」


「好きなものを好きなだけ食べた結果、願い事を叶えてる様な神様は、何処にもいないと思う──」


「じゃあ 願い事を叶えるためには、どんな願掛けをすれば 良いと言うんですか?」


「…どうして、願掛けが大前提なの?」

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