2012年11月某日消印 峠正茂からの手紙 

 いつもお手紙をありがとうございます。私としては死刑にしていただきたかったのですが、思いを遂げる事ができず悔しく思っています。この度、どうしてもはっきりさせたい事があり返事を書かせていただきました。


 井上友里恵さんを殺したのは私です。藤田さんが書かれていた「誰か別の人が殺したのですか?」は明確に否定させていただきます。

 警察の方々に話した通りです。そしてニュースでも出ているとは思いますが、証拠も多くあります。


 包丁は自宅にある物を使いましたし、私の指紋も付いています。当たり前です。私が井上友里恵さんを殺したのですから。


 藤田さんはハッキリとは書かれていませんが、井上友里恵さんの周りの方にも話を聞いているのでしょうか。心中お察しいたします。井上友里恵さんは私に殺されたのが1番の不幸だとは思いますが、周りにあのような方々ばかりだったのも不幸の一つだと考えています。


 今はただただ毎日を懺悔に費やしています。許されない事をしてしまったのはわかっています。

 最後にもう一度書かせていただきます。

 井上友里恵さんを殺したのは私です。


~メモ~

 峠がアイドルのライブに通うようになったのは3年程前、ライブハウスの客に聞いても「見たことあるかもしれないが、話したことはない」との返事ばかりだった。


 本当に地味でこんな風にやり取りができる男がどうして井上友里恵を殺したのか?


 ストーカーだったと供述していたが、何か引っかかる。アイドルファンがストーカーになって殺人に至るとするなら、なぜ井上友里恵だったのか?もっとアイドルらしい子や、客との境目が曖昧な子もいる。


 峠は食品工場勤務。公認会計士の資格持ち。経理の一員として働いていた。同僚に話を聞いても「普通の男だった」「酒も飲んだりするがビール2本程度だった」「同僚が休んだ時はその分の仕事も巻き取っていた」普通の男、いや、優しい男としての印象を話している。


 何があって何が殺したのか?『誰』が殺したのかははっきりしているが、『何』が殺したのかが全く見えてこない。

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