2-11:E

ミライが魔法で鍵を開くと、4人は金庫の中に吸い込まれていった。


◆第三階層侵入◆


金庫の中には、夕暮れの公園が広がっていた。

「え?戻ってきたの?」

「いや、よく見るんだ」

ライチの言葉に、ミライは当たりを見渡す。一見すると最初の公園だ。だが、何かが違う。遊具は古く、ベンチも見覚えがあるものだ。ここは、ミライの心理世界に近い。


「どーゆーことよ?ここ、ミライ君の心理世界とそっくりじゃないの」

マモリも困惑する。ただ一人、リッカだけは、すべてを理解していたようだった。

「みんな、あれを見て欲しいの」

リッカが指差す方向を、三人は見る。


そこには、幼いミライに話しかける、幼いリッカがいた。

「もし私が悪い魔法使いに捕まっちゃったら、ミライ君は助けてくれる?」

「うん!」

「やったあ!約束だよ!」

「うん、約束!」

「それから、もし私が……」


ミライはその光景に見入っていた。自分が思い出した記憶と同じものだ。だけど、その続きが思い出せなかった。それが、リッカに封じされた記憶なのだろうか?


「もし私が……」

幼いリッカは少し考えて、言葉を続けた。

「もし私が、悪い魔法使いになっちゃったら、私をやっつけてくれる?」

「えー!リッカちゃん悪い魔法使いになっちゃうの?」

「もしも、だよ」

「うーん、うーん……」


幼いミライは悩み、答えた。

「うん……」

「約束だよ?」

「うん、約束」

その言葉を最後に、四人は心理世界から解き放たれた。


◆第三階層脱出◆

◆第二階層脱出◆

◆心理世界脱出◆


四人は現実世界のアトリエに戻った。

「さっきの約束って、どういう……」

ミライがリッカの方を振り向くと、リッカは涙を流しながら答えた。


「全部、思い出した。私は、ミライ君に……」

「おっと、そこまでですよ」

リッカの背後に突然の介入者。あの黒魔法使いだ。


「あ、アンタは!」

「お久しぶりです。マモリさん。ですが今回は時間があまりありませんので」

黒魔法使いがそう言うと、リッカと黒魔法使いの姿が闇に飲まれていく。転移魔法だ。


「リッカ!」

ミライが叫ぶ。だが、魔力がない彼には、今はどうすることもできない。

「ごめんね。私、悪い魔法使いになっちゃったんだ。だから、お願い、私を……」

最後の言葉を残す事もできず、リッカは消えていった。

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