2-3:マモリ1

ライチがアトリエで調査しているころ、マモリは公園にいた。不気味なほど静かで、誰もいない公園。

「……いるんだろ?」

マモリはどこを見るともなく呼びかける。


「いやあどうもどうも。貴方なら来てくれると思っていました」

マモリの目の前に現れたのは、黒魔法の気配を纏ったあの男だ。その姿は無個性で、とらえどころがない。


「アンタには聞きたいことが山ほどある。もちろん、答えられないってんなら力ずくでも聞き出してやるけどな」

マモリはビー玉を構える。

「まあまあ落ち着いて。いくら魔法で人払いをしているとはいえ、それは少々目立ちます。それに、話せることはできる限りこちらから話すつもりですよ」


「アンタの望みは何だ?」

「ふむ……。いえ、なに、簡単なことです。我々は、リッカさんを"漂白者ブリーチャー"から守りたい。ただそれだけです」

「だったらアンタが直接守ってやればいいじゃねーかよ」


「その指摘はごもっとも……ですが、もし我々が表立って動けば、あなた達の上司が黙ってはくれないでしょう?」

黒魔法使いとは自分の欲望に負けたものであり、魔法使いの間では、ありていに言って敵として認識されている。欲望に負けるとはすなわち、好き勝手に魔法で暴れまわるということであり、秩序を乱すものであるからだ。


「……」

マモリが閉口する。たしかに、黒魔法使いが見つかったとなれば、それの対処が優先される。しかし、目の前の男は、目下最優先で撃退するほどの邪悪さを持っていない。


「オーケー、わかった。アンタもリッカを"漂白者ブリーチャー"から守るっていうところじゃ目的は一緒だ」

「ええ、そういうことです」

「そこまでくりゃあ話は早い……」


マモリが一呼吸おき、間を作る。これから言う言葉を、相手に刻みつけるように。

「……アンタ、"漂白者ブリーチャー"が誰か知ってるんだろう?」

黒魔法使いはニヤリと笑い、こう答えた。


「ああ、知っていますとも。彼女は、貴方の学校にいるのです」

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