1-14:染戦2

三人は今一度、リッカの病室に集まった。

「それじゃ行くぞ。”深きへ沈め、『夢』へと潜れ”」

三人の意識は、リッカの世界へと入っていった。


……そこは、だだっ広い牢獄だった。丈夫な鍵で閉じられた折の向こうに、リッカが座り込んでいる。

「リッカ!助けに来たよ!」

ミライが呼びかけても、声は帰ってこない。


「どうやら、この鍵を開ければいいらしい。今回は分かりやすいな」

心の世界は人よってまちまちだ。解放のために複雑な迷路を解く必要がある時もあれば、強敵を倒さなければいけないときもある。

「よーし、そんじゃさっそく行っちゃいましょうよ」

マモリが一歩進み出る。


「待って!上だ!」

「え?」

マモリが上を見た時、黒い塊が降ってきた!

「うわ!っと!」

間一髪で避けるマモリ。

「鍵はフェイクでこっちが本命ってことだ」


「ハン!鍵開けなんかよりこっちのほうが分かりやすいわよ!」

マモリがビー玉を構える。

「いいか!ミライ君!今回は一発当てれば勝てるわけじゃない。何発が魔法を当てて、黒を削っていくんだ!油断はするなよ!?」

「はい!」

ライチは筆を、ミライはカードを、それぞれ構えた。


◆染戦開染◆


黒い塊が立ち上がると、その姿は箒に乗った魔女となり、ライチに突っ込んできた!

黒魔法に呪文は不要。すべての色を内包する黒は、言葉を持たずとも力を成せる。

「”風よ『留まれ』敵を抑えろ!”」

ライチは緑の筆で目の前に大きなバツ印を描いた。魔女はバツ印に突っ込み……弾かれる!

魔女の体から黄色の魔力が飛び散る!


「もらったぁ!」

マモリが飛び散った魔力をすかさずビー玉に封じ込める。魔力をぶつけて飛び散った魔力を奪う。これが染戦の基本だ。

「あいつの魔道具は箒だ!スピードに惑わされるな!」


「わかってるっつうの!」

マモリは魔女に狙いを定めてビー玉を弾き、呪文を唱える。

「”赤色『解放』黒色灰燼!”」

うち放たれたビー玉は赤熱を帯びて加速!魔女に襲いかかる!


だが!魔女は急ターンし、ビー玉を箒で打ち返したではないか!

「しまった!」

ビー玉がマモリの足を貫く。血が、赤の魔力となって流れ漏れる。

「マモリ!」


「心配すんな!これくらいすぐに治る」

マモリの言葉通り、足の傷はすぐに塞がった。だが、これも盛り込んだ魔力が残っているうちだ。

「それよりほら!アンタの魔法でリッカちゃんを救うんだろ?見せてやんなよ!」


「よし……」

ミライは魔女に狙いを定める。素早い飛行だ。目で追うにはあまりにもあまりにも早すぎる。狙うならば……。

(カウンターだ!)


魔女がミライに向かって突撃したきたその時!ミライが青いカードを手に取り、呪文を唱える!

「”地面から空に、吹き出せ『水』!”」

呪文とともにミライはしゃがみ、カードを持つ手を地面に叩きつける!魔女はミライを通り過ぎ、そして、突然の間欠泉に大きく打上げられた!黄色と青の魔力を放出!


「いいぞ!あと一息だ!」

ライチの言葉の通り、魔女の身体はボロボロと崩れ去ろうとしてる。魔女は最後の力を振り絞り、ミライに真上から垂直落下突進!


「そうはさせるか!”脚力『活性』跳躍超越!”」

横から飛び蹴りを食らわせたのはマモリだ!魔女の最後の一撃はミライに届く前に蹴り飛ばされた!


橙の魔力を放出した魔女は、霧散して消えた。


◆染戦閉染◆


「さあ、それじゃ最後の儀式だ。リッカちゃんを開放しよう」

ライチは鍵の前にミライを呼び寄せた。

「いつもだったらここで大切なものとかを見せて心を開かせるんだけど、今回はキミの役目だ」


「ここまで来て言うのも何ですけど、どうやればいいんですか?」

「簡単よ。アンタのもう一つの魔法、たしか『記憶』なんでしょ?それで思い出させてあげればいいのよ」


ライチは昨日の夢を思い出した。あれがもしも、ライチに授けられた記憶だとしたら、リッカはそれを忘れているかもしれない。ライチは橙色のカードを取り出して、呪文を唱えた。

「”思い伝える鍵となれ『記憶』”」


カードは鍵となった。扉の鍵穴に差し回すと、鍵が開き、扉が開いた。

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