透けて見える魔法

紀之介

掛けて欲しい?

「…ものが透けて見える魔法も、知ってる」


 水無月さんの言葉に、春人くんが興味を持ちます。


「それって…人が着ている服とかが、透けて見えたりするの?」


 水無月さんは頷きました。


「掛けて…欲しい?」


「…え?」


 話を聞いていた文月さんが、口を挟みます。


「ちょっと?」


「ん?」


「─ そんなことしたら、私たちの裸 見られちゃうじゃないの!」


「…だいじょうぶ」


「私は、大丈夫じゃな…」


 文月さんの言葉をかき消す様に、水無月さんが呪文を唱え始めました。


「み・な・づ・き!」


 文月さんの抗議の甲斐なく、魔法は完了します。


「…どう?」


 水無月さんは、春人くんに確認しました。


「─ 魔法、失敗してない?」


「何で?」


「何にも、見えないんだけど…」


「…それは、成功してる証拠」


「─ え?」


 春人くんには、訳がわかりません。


「服も透けるけど…それ以外も透けて見えるって事?」


 文月さんの問い掛けに、水無月さんが頷きます。


「…結果として、反射して目に返ってくる光がないから、何も見えない。」


 真相を知った春人くんは、水無月さんに頼みました。


「魔法、解いて欲しいんだけど…」


「…何か、奢ってくれる?」


 水無月の言葉に、文月さんが同調します。


「─ 服を透かして、私達の裸を見ようとしたんだから…まあ、当然だよね。」


 承服出来ない様子で、春人くんは沈黙しました。


 それを見て、文月さんが呟きます。


「水無月。こいつ、反省してないみたい。」


「じゃあ、このままで、構わないかも。」


 とにかく魔法を解いて欲しい春人くんは、叫びました。


「すいません!是非とも、何か奢らせて下さい!!」


 春人くんの叫びを聞いた水無月さんは、魔法を解く呪文を唱えようとします。


 それを止める様に、文月さんが片手を上げました。


「魔法を解くの…奢ってもらってからにした方が、良くない?」


「…そうかな。」


 2人のやりとりにを聞いて、春人くんは懇願します。


「絶対に! 確実に!! ご馳走させて貰いますから!!!」


 言質を取った文月さんは、満足そうに 水無月さんに囁きました。


「─ お腹も空いた事だし…魔法、解いてあげたら?」

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透けて見える魔法 紀之介 @otnknsk

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