第18話

【期待と希望】


まさおは、期待と希望と嬉しさでいっぱいだった。



少しの不安はあるけれど、とにかくルンルン気分だった。




今までの道のりを振り返ってみると、本当にロクなことがなかった。



ダッチワイフを売りつけさせられたり、ダッチワイフを売りつけさせられたり、時にはダッチワイフを売りつけさせられたり。




でも、これからは、心理カウンセラーとしての訓練、自分に向いていそうな訓練ができるのだ。



小さな子供が、買ってもらったばかりの長靴を履きたくて仕方ないので、用事もないのに、晴れていても長靴で歩き回るような、そんな気分である。



そして、大人たちに、聞かれてもないのに、「これ、買ってもらったの!」と言いふらすような、のどかでかわいい子供。




そんな気分になるのは、まさおは久しぶりだった。




まさおは、近所の商店街を鼻歌まじりで歩いた。



「コロッケ屋さん、こんにちは。僕、心理カウンセラーになるの」

「あら、そうかい。それは良かったねえ。コロッケひとつサービスしてあげるよ」

「ありがとう」





「ここ、もう営業してますか?」

「あ、あと10分したらなんだけど、もういいですよ。コーヒー飲んでゆっくりしてください」

「喫茶店のマスター、僕、心理カウンセラーになるの」

「あら、そうなんですか。それは良かったですねえ」

「うん、さよなら」

「あらら、帰っちゃったよ」





「パン屋さん、こんにちは。僕、心理カウンセラーになるの」

「あら、まさおちゃん、久しぶり。良かったねえ。パン一個サービスだよ」

「ありがとう」





「おじさん、おじさん」

「あら、かわいいお嬢ちゃんだねえ。でも、おじさんじゃないよ。心理カウンセラーだよ」

「おじさん、この長靴、お母さんに買ってもらったの!」

「あら、そんなことより、僕、心理カウンセラーになるの」

「ふーん。えっとね、えっとねー。この傘も、お母さんに買ってもらったの」

「そんなことより、僕は心理カウンセラーだよ。すごいね!会いたいね!」

「アンパンマン、これ」

「何が?」

「この長靴、アンパンマン。これ」

「アンパンマンより心理カウンセラーのほうが会いたいねー。良かったねー」



女の子は、身の危険を感じたのか、去ろうとした。



その時である。




「待て!今までのここの商店街の人は、みんな、俺が心理カウンセラーだと言うと、必ず何かくれた!お前からは、その、アンパンマンの長靴と傘をいただこう。きえーっ!」




まさおは女の子に飛びかかり、傘と長靴を奪った。





そして、泣き叫ぶ女の子を丸呑みにして食べてしまったのだ。






それぐらい嬉しかったのだ(^_^)

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