第11話 コタツになくてはならぬもの

今日は春の一日とは思えない寒気でした。とはいえ、そろそろ皆様、コタツというブラックホールから抜け出されているのではないでしょうか。ここで質問、コタツとセットの食べ物は?


みかん、そうみかん、こたミカ、と呼ばれるそれはもはや日本の伝統。ですが、ここでは敢えて否定しましょう。コタツには羊羹である。今、大きく頷いた方は福井県民でしょう。僕は京都北部人と福井人のハーフなんで福井の祖母の家に行くと、常に水ようかんを食していました。まぁ、ウチの場合は冬に限らず上等なおやつとして水ようかんだったらしいのですが。

いつも福井県小浜市に行くと小浜の丁稚ようかんを購入します。これが程よい柔らかさで、ツルとろなんです。口に入れた瞬間はツルっとした食感ですがすぐにとろりとほぐれて……喉越しも……ようかんは喉で味わえ、とまでは言いませんが美味いんですよ。ですが、僕が慣れ親しんだ水ようかんとは別物とまでは言いませんが違うんですよ。感覚的にはツルとろ、ではなくツルふわ、なんですね。もう意味が解らなくなりそうでしょうがこんな違いです。口に入れた瞬間はツルっとした食感ですが、次が違うふわっと蕩けるんですよ。もう一段階、軽やか、といえばいいのか。身びいきとか記憶を美化してる、と言われてもあれは絶品でした。掘りごたつに入って飼い猫を足で弄りながら、家族で食べた記憶があります。

自分でも作るのですが、材料としては寒天、水、小豆(あんこ)だけというシンプルさの中で同じ味へとたどり着けない。こしあんの量や漉しかた、はたまた寒天が違うのか。冷やし方などなどノートに記録しながら何度も作るがたどり着けない迷路に迷い込んでいます。さらに考えられるのは水の分量と成分の違いでしょうか?ウチの田舎は地下から汲み上げているのは変わらないのですが、水質が変化しているのかも知れませんね。そうなるともう幻の味なわけです。この水が違う説がかなり僕の中では有力なんですよね。この間も山際の友人宅の山から引いている水と市の水道で飲み比べると、硬度(含有されるミネラルなどの違い)などの差なんでしょうが全く違うものなんです。

そんな訳で挑戦は続くのですがあのツルふわに僕はたどり着けないのかもしれません。それでも冬にはコタツで水ようかんは続いていくのでしょう。あなたにもそんな一品があると思います。

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