第10話 腹が満ちれば争いも減る?

春です!山菜の季節だ!

そんな気分で山菜関連で書こうかよ考えていたのですが……今年も奴らに先着されたのです。柔らかな春の山菜を鹿たちが美味そうに食べていたのだ。あ、前にもなんてデジャヴ、いや間違いなく去年も食われていたのです。うちの田舎の山は広いんで山菜採取ポイントも幾つかあります。去年と違う場所でとれば問題なかろう、と思っていたら先回りされていた。勢いで鹿に上から蹴り入れて、猟友会のおじさんに怒られた過去が蘇ったが、かつての元気は無く、時間も無くわずかな鹿の食べ残しを頂き帰ったのでした。

そんな訳で山菜料理を書くテンションが上がりません。食ってないんだからね。食わないと駄目なんですよ。書けないんだ。料理する気がわかない。炊けたご飯の匂いだけが台所を漂っていた。もう手間はかけたくないよ。……あー、そういやアレがあったか。アレを取り出して水に浸けて解凍をさせておきます。ちょいと、時間がかかるので、その間に再読していた2001年宇宙の旅を読み進める。そういや映画の2001年て、結構、食べるシーンが多かったよな。液体状のパックに入った、チキンだか、ハムだったか。忘れたけどキューブリックってユダヤ人だからハムは教義的に違うか。まぁ、あとで調べてみよう。それからトレーに入ったペースト状の何種類かに別れた食事。機能的だろうけど、目で楽しめないし味気ない。SFの食事で美味そうなのって何かあっただろうか。SFと食べ物と言うとソイレントグリーン(ハリスンのSF小説、人間がいっぱいの映画化作品)が浮かぶが内容は楽しい食事にそぐわないので言及は避けます。SF飯とかシリーズで考えてみるか。そんなあれこれを考えるうちに解凍が済んできた。

僕は丼を取り出し、ご飯をこんもりとよそって鰹節パックから二袋を取り出して、ご飯の上に投下。炊き立てご飯の熱気で鰹節が嬉しそうに踊って、食欲をくすぐる匂いがふんわり空気に混ざり始める。昆布ダシ醤油の作り置きをサッとかけて、さて、これだけで食べるのも芸が無い。いや、美味いんだけどね。さて解凍が済んだアレとはすだちである。こいつの絞り汁を振りかけ輪切りにしたすだちを端にそえてやる。そうすると爽やかな風味が加わり、すだちの緑の色合いが春らしい一品となります。

もう後はアツアツのうちに掻き込むだけであった。鰹節と醤油って最高の組み合わせだ。さらにすだちは主張はあるけど全く邪魔にならずに味の幅を広げてくる。ああ、最高だ。噛み締めるたびにそう思う。今ならあの憎っくき鹿も許せる。奴らも食わねば生きていけないからな。人間、腹が満たされていれば争いにならない事を改めて感じいるのでした。そして頼むからソイレントグリーンな未来が来ないように、と祈りつつ、僕は箸を置いた。

これって酒の締めにも行けますよね。では、また!

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