一人の画家が残した絵から始まるお話。
耽美な描写がなかなか良い具合です。
呪いの絵について探っていくようなお話ではなく、どうして画家はその絵を書いたのか。というようなお話。
この辺りで絵の謎が気になる方は少しズレを感じるかもしれませんが、これはこれで良いんです。
この絵が存在するということがこのお話の中で重要なのだと思います。
正直なところ人を選ぶでしょう。
はっきりと感想が分かれるお話だと思いますが、僕はこういうお話が好きなのでこのような評価にさせていただきました。
ただ個人的には唯一の人間であるセシルの存在感がもっとあればと思うところです。
ディータとセシル。この二人の対立、違い、葛藤などがよりはっきりと見えてくるようになればもっと僕の好みになりました。
この存在感の薄さが作劇で効果を生み出している可能性も否定はできませんが……。僕個人の好みの問題です。
しかしそんなことよりもこう上手く男同士の絡みを見せられるとどきどきします。さすがの上手さでした。
独特且つ妖艶さのある大人向けのファンタジー...!なのですが、キャラ達それぞれの『幸福』を求める感情は生々しいだけでなく毒々しさを兼ね備えており、たった4万字とは思えない程濃密な時間をこのストーリーの中で過ごす事が出来ました。大満足です...!この作品を読んで良かったと素直に思いました。風嵐さんの作品は本当にハズレがないです。
途中のキャラ達が繰り広げる会話には、自分にとっての『幸福』ってなんだろうか...?と考えさせられました。今まで生きてきて『幸福』についてこんなに冷静に考えた事なんてあったかなぁと。皆様もこの物語をきっかけに『幸福』についてぜひ考えてみてはいかがでしょうか...?
最後に何と言ってもこの物語の魅力は大人な描写部分であるかと思いますが...もう、ばっちりです。あまり書くとネタバレになるのが嫌なのでこの一言でアピールします、ばっちりです(笑)非常に美しいので男女共に嫌悪感なくスッと受け入れられると思います。もしタグで読み避けしている方がいらっしゃるとしたらかなり勿体無いです...!ぜひページを捲ってこの世界観に浸って下さい...!