第14話 ソレ必要か?

「カレーどうだった?」

「うん、適度に辛くて、まぁ美味かった」

「そうだろ?良かっただろ?カレーで」

「俺はいいけど…お前、ハッシュドビーフどうだった?」

「食った事あるような気がするんだよな、アレ」

「珍しいもんでもねぇからな」

「そうなの?初めて食ったよ俺」

「お前今、食った事あるとか…いや…いい」

「カレーってさ、鍋いっぱいに作るじゃん」

「まぁ、そうかもな」

「減ってくるとさ、継ぎ足すじゃん」

「昔、寮で住んでた時はそうだったな」

「うちでも」

「お前の家のことは知らんよ」

「ボンカレー持たされたけど…鍋のカレーでも良かったんじゃないのかな?」

「えっ?お前の家、昨日もカレーだったの?」

「確かね…ボンカレーじゃねぇよ」

「ボンカレー鍋いっぱいに作らねェだろ」

「普通のカレーだった、鍋のわ」

「お前の家、カレー在庫豊富だな」


 中古の家電が欲しいというので場所を移動した。

「おい…コレどう思う?」

「なんだソレ?」

「コンポだ」

「ちっこいな」

「2500円だ」

「安いな…必要なのか?」

「要るだろ、俺の家のコンポ、リモコンがねぇんだ」

「あぁ…致命的だな…ON・OFF以外が微妙そうだな」

「よし、コレ買うわ…ん?そうすると、今のコンポ要らないわ…お前にやるよ」

「要らん」

「なんで?コンポある?」

「いや…家で音楽聴かないし」

「あぁ…お前、音質とか気にしなそうだもんな」

「まぁね」

「俺は、こだわるんだ、たとえばコレ、アンプ3800円、お買い得だね」

「へぇ…俺、どうでもいいわ」

「このスピーカーと組み合わせるわけ」

「うん…買えば?」

「いや要らない、そこまでこだわらない」

(こだわりのレベルが解らんよ)

「コレ…絶対に必要」

「なに?」

「ファン」

「はっ?」

「ファン」

「ファン?」

「俺の家、台所に換気扇が無いんだ」

「珍しい家だな」

「そこで、ファンが必要」

「ちょっと解らんけど…換気扇買えば?」

「換気扇、高いんだ」

「このファンなら、1580円」

「ファンっていうか…卓上扇風機だよソレ」

「あぁ…コレを窓から外に向かってブオーと回すわけだ」

「えっ?ファンだよ…空気を引っ掻き回すだけだよ」

「だから! こっちを外に出すんだ」

「バカなの?窓開けてんのと変わらんじゃん」

「ファンが外に空気を出すでしょ」

「窓全開じゃねぇか! しかもファンの吸気口、脇に付いてるぞ、ココを挟んだら、ほぼ外の空気をさらに向こうへ飛ばすだけじゃねぇか、要らねえだろ」

「いや、コレは要るね、臭いが籠るんだよ」

「だから、窓開けてりゃいいじゃねぇか、ファン要らないよ」

「要る、コレは絶対に要る」

「いや…俺の物じゃないからどうでもいいけど…無駄だろ…どう考えても…換気扇買えよ、ホームセンターで」

「いや…ファンが欲しいの」

「アレでしょ…欲しいだけでしょ」

「ん…いや家族も喜ぶわ」

「いや…呆れるね…」

「おっ、ビール安いぞ」

「もう、何でも買えよ…」

「でもな~無駄使いなんだよな…ビールって…」

「ファンとコンポのほうが無駄じゃないのかな」

「リモコンがねぇんだぞ!」

「リモコン買えば?万能リモコンみたいなの」

「コレ、リモコン付いてんだぞ!」

「そりゃリモコン無しなら、完品として売れねぇだろ、ほぼジャンクだ」

「お前…ホントにコンポ要らない?」

「くれるなら、今買おうとしているソレくれよ」

「コレはダメだぞ…やれねぇ」

「で・・・ビール買うのか?」

「いや…今日はコレだけ買えば充分だ、節約、節約」

「全然、節約じゃねぇ…ビール買えよ…安いなら、ファンもコンポも買わねぇでさ」


 ビールを諦めてファンとコンポを買いました。


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