第7話 ノールランドの復興

 そんなわけでホークルとして初めて我らがノールランド・ブラウザーバックスの選手となったババンガバンバンギダ(以下トミー)は、晴れてモヒカン刈りにされ(笑)、他の選手たちと共に、街の復興活動に従事することになったの。


 どういうこと? って思うよね。


 世紀末の戦争で荒廃したノールランドは、この時期も他の国からいただいた義捐金を使いながら復興が進められていたの。もちろん首都機能はいち早く復旧したし、今は各国との貿易に関わるハブ都市として大いににぎわっているのだけど、郊外の居住地区の立て直しには時間がかかっていたのね。スポーツ選手だから、高給取りだからといって祖国の惨状を見て見ぬふりをするのは男がすたる、ということで、ノーブラの選手たちもドワーフ守備陣を中心としたボランティア部隊を結成し、試合のない日は各地域に奉仕活動に向かうのが常だったのよ。


 被災地の人たちは最初、屈強なモヒカン男たちにおびえていたものの、相手が国を代表するスポーツマンだとわかると温かく迎えてくれるようになったみたい。何より様々な種族が避難している仮設住宅などでは子供たちに人気のある選手たちが先日のドラゴン退治の武勇伝をきかせたり、ミニゲームで笑わせたりと、それまで陰鬱だった空気を一掃してくれる、ということでなかなか受けが良いらしいの。


 選手たちも義務感というよりは、むしろ自分たちの存在意義を認識できる良い機会として前向きに受け止める人が多いのだとか。私にはわからなかったんだけど、スポーツと言ってもそれはやっぱり男の戦いだし、命がけだし練習は厳しいし、俺たち何のためにこんなことやってんだろって思うことも多いらしいのよ。そんな中自分たちが「子供たちの憧れの存在である」って実感できることが、自らの存在価値を再認識することにつながるんだってさ。まあ、ヒーローなんだね。


 もっとも下っ端のトミーは先輩方の指示であれこれと忙しいようで、荷物運びとして、ボランティアとして、そしていじられキャラとして、一日中バタバタ走り回っていたみたい。頑張れヒーロー(笑)。


 そういえば「どの種族もスポーツに参加できるの?」ってたまに聞かれるから私もマスターに聞いたのよ。それによると「手と足を持つ会話ができる種族は原則OK」らしいのね。だけど試合中に空を飛ぶのはダメなんだって。そりゃそうよね。だから翼がある種族(ホークマンとかハーピーとかワーバットとか?)はスポーツにはあまり興味がないみたい。あと大きすぎる種族は、サイズによって一度に参加できる人数が制限されるんだって。確かにあのフィールドにドラゴン族や巨人族が2体以上入ったら大変だよね。


 それと試合中に魔法を使うことは原則禁止で、あくまで体の力で戦うことが前提なんだって。だからゴーレムや精霊とかはダメなのね。例外として、緊急救命措置が必要な場合においては敵味方関係なく回復魔法をかけることが許されるの。簡単な怪我程度であれば試合を止めないよう、一度フィールドから出て救護班の治療を受けることになっているから、いつでもOKってわけじゃなくて、あくまで意識不明の重体に陥ってるときだけね。そしてそれを判断するのはチーム内のキャプテンなんだけど、即時対応が求められるから、キャプテンには回復魔法が使える人が抜擢されるケースが多いみたい。ちなみにうちのキャプテンはドワーフのセンターくん。彼はまだ若いんだけど優しくて頼りがいがあって私の一押しプレイヤーです♡


 そういえばゲームの人数の話もしておかなくちゃならなかったわね。基本的にフィールドプレーヤーが11人対11人のゲームなんだけど、攻撃と守備の時間帯が分かれてて、攻撃専門の選手と守備専門の選手それぞれが必要だからスポーツチームは大所帯になるの。選手は試合中に何回でも入れ替えられるらしいけど、ポジション毎の専門性が高いからなおさら人数が必要になる。うちはトミーが入ったから23人になったけど、相当少ない方ね。回復魔法があるから怪我での長期離脱とかはないけれど、それでも調子を落としたり、作戦の相性なんかで選手を交代させたりしたいから……って、私もそこそこ詳しくなってきたのかしら(笑)。


 ところでうちのチーム名のブラウザーバックスっていうの、これもいまだに意味わかんないのよ。聞くところによればうちのマスターがチームの構想を練っていたときに、ちょうど目の前にいた人に向かって、


「お前はもう、ブラバされている!」


 みたいなことを言ったのが自分でもツボに入ったらしくて、いつの間にか決まっていたとかなんとか。まあ、それこそどうでもいいんだけどさ。



 でね、ノールランド以外の国の現状はどうかというと、そこまで悲惨な状況ではないらしいのよ。こないだ試合したD&Dのポルポル王国なんかは、仕事をしないダメエルフたちがのほほんと生活してるし、他に国境を接する国もわりかし裕福な地方が多いみたい。貧乏なのは戦時中にノールランドと熾烈な争いを繰り広げたローランドくらいかしらね。この国とうちらとは戦争が始まる前から仲が悪いようだけど。


 そんなわけで次回はこの『ローランド・ワナビーズ』との死闘のお話です。相手をホームに迎え撃つ我々、果たしてワナビどもをブラバできるのか!?

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