第4話 ココロの病院

「実家、帰ったら?」


投げられた、と思った。

薬をコロコロと変えられ、頭の中ではシャンシャンと鈴の音が鳴り続けて指先は痺れている。

真っ直ぐに歩けない。


後にも先にもこんな苦しい思いをしたことがなかった。

病院を出たあと、ビルの踊り場で泣いた。


そもそも、ココロの病気は薬で治るんですか?

ココロってどこにあるんですか?


精神疾患の怖いところは、「分からない」が多すぎるところだと思う。


どうしてこうなったのか、分からない。

頭の中で何が起こっているのか、分からない。

どうやったら治るのか、分からない。

これからどうなってしまうのか、分からない。


医者に聞き、本もたくさん読んだ。

分からない。ということだけが分かった。


結局、父親に付き添われて別の病院でセカンドオピニオンを受けた。

急な断薬による離脱症状で間違い無いと思う、と言われた。


今は1種類の薬で落ち着いている。

昔は多剤大量処方が普通だったらしい。

私に実家に帰るよう促したお医者様は随分おじいちゃんだった。


薬は飲むのは簡単だが抜くのは本当に難しい。

薬を飲むのが怖くなった。でも飲むのをやめるとどんなことになるのか痛いほど知っている。


現状維持と、再発予防。

病と闘うのをやめて、上手に付き合っていくしかない。

完治ではなく、寛解。


大丈夫、きっと、よくなる。

そう信じたい。

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