劣者のかがり火

人は食料であり、建材であり、計算資源である。
人が人をリソースとして使う狂った世界を静かに、けれど説得力を持って描く物語。

導入は伊藤計劃氏の著作や『PSYCHO-PASS』、星新一氏の『生活維持省』を連想させる作りです。
しかし、決して借り物の寄せ集めではありません。
これらは「ヒューマンリソース社会」という異常な世界を最大限分かりやすく描くため、あえて引き合いに出されたように思います。
その結果、「人が人を食べる」という禁忌が社会に組み込まれ、あくまで合理的に成り立つ様子をまざまざと見せつけられます。

社会を維持するコンピュータ――もちろん人脳製――に不適と判断された者は、明日には食肉かアクチュエータの一部として解体されてしまいます。
人々はリソースとして使い潰されないよう、自らの存在を証明し続けなければなりません。

そうして適者に成れなかった者はどこへ行くのか。何を残せるのか。
疑問を抱いた主人公は、やがて研究者への道を選びます。

中盤はリソースとして消えていった人々と、彼らをこの世に残すための技術が物語の鍵となります。
同時にその技術の下敷きとなる仕掛けが独走し、とても入り組んだ事件が展開されていきます。

本作は4部構成の1部を抜き出したものだそうです。
そのため、中盤の事件の結末は序盤に語られた魅力的な世界設定にいまいち馴染まない印象があります。
おそらく、1部の結末を踏まえて更に大きな物語が展開されるはずだったのでしょう。
もし続きが描かれるのなら、ぜひとも読んでみたいものです。

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