適者 (第6回座談会公開済み)

エントリー#08


作品名  適者

作者名  昏部贋作

作品URL https://kakuyomu.jp/works/1177354054882680656



作品のキャッチコピー、あらすじ

『食人国家にて、魂たちはついに救済される。』


資源不足の時代を、人間の生体転用と食人文化によって生き残り、再び繁栄を取り戻した未来の日本。人を資源とする手法のために周りから人がいなくなっていくことに悲しんだ麻也際善次(まやぎわぜんじ)は、生物工学の研究者として上り詰め、いなくなってしまう魂たちを残す道を探し続けていた。そこに倫理監察官、琴永糸雲(ことながしくも)が現れ、いなくなった人たちを探しながら、彼らに関係する事件を捜査するよう依頼。依頼を受けた善次は、事件を追いながら失われた彼らを脳内に復活させてゆく――。



作者からの一言、メッセージ


「大嘘で塗り固めたきれいな悪夢みたいな作品」



座談会


ななせ「さーて、今日の『座談会』も元気に行きましょー」


七瀬 「第六回だね。六回も続けられたことに感謝だね」


ななせ「まぁ、日々感謝ですよね。今回の作品は『適者』。作者は昏部贋作さん。おそらくなんですけど、この作者さん、今回の〈カクヨム計劃トリビュート/〉のために『カクヨム』に登録してくださったみたいなんですよね」


七瀬 「それは嬉しいことだよね。もしかしたら、僕たちの文法が『カクヨム』の外にまで広がったのかもしれない。これも参加してくれた作者さんたちのおかげだね」


ななせ「ほんとですね。さっそくエントリー作品について語っていきたいと思うんですけど――今回は大作というか、ずいぶん骨の太い物語が来ましたね。世界観、ストリー、キャラクター、ガジェット、どれをとっても太いです」


七瀬 「作品の後書きを読めば分るけど、もともと長編の冒頭で、四部あるうちの一部を完結させた作品なんだね」


ななせ「文量も三万文字を越えて中編の文量ですもんね。読み応えもたっぷりでした。この作品で驚かされるのは――まず世界観ですね」


N氏 「その通り。物語は――資源が枯渇した未来の世界で、人間は人間をリソースとすることで存続をしている。正確には人間をリソースとする国家だけが存続をしているという状況で、その国家とは――我らが日本。作中では『Crazy Japan.』という形で示されている。脳を計算資源、骨を建築資源、肉を食料資源として、『選定』された人間のリソースを余すことなく流用されるグロテスクで恐ろしい『食人世界』だ」


七瀬 「……人間が人間を食べる? 考えるだけで頭が痛くなってくる作品じゃないか」


ななせ「それはその通りなんですけど、作品を読んでみるとそこまでグロテスクではなく、どちらかというとミステリー的な要素の方が強かったです」


N氏 「食人文化――カニバリズム系の作品というと、レクター博士が登場する『ハンニバル・シリーズ』や『アンデスの聖餐』、『東京喰種』、『ミノタウロスの皿』などがあり、最近では『Gのレコンギスタ』でクンタラと呼ばれる食糧にされていた人種が登場している。マイナーではありながら、素晴らしい作品を輩出しているジャンルだが、この物語は世界観こそ『食人文化』を扱っているが、グロテスクな描写は極力避けているように見える」


ななせ「第一部となる今回の物語では、人間を食べているという直接的な食事のシーンはありませんでしたからね」


N氏 「伊藤計劃氏直系のユートピア的ディストピアを描きつつ、『選定』によって消えた人たちを追い、その魂を再生するというのが大きなストーリーだ」


七瀬 「なるほど……」


ななせ「七瀬さん、顔色が悪いですよ? 主人公の麻也際善次まやぎわぜんじは生物工学の研究者で、この食人文化の世界に疑問を抱いていており、『選定』されて消えてしまった人たちの魂を再生できないだろうかと独自の研究をしているんです。そんな彼のもとに、『倫理監察官』琴永糸雲ことながしくもが尋ねてくるという導入です」


N氏 「長編の組み立てということで、食人文化、死者の再生、乖離性性同一性障害、ミステリーと、複数の要素やガジェットが織り込まれているのだが、この一遍だけでは主人公の目的である『死者の再生』が達成されず、食人文化への掘り下げが無かったことが残念だ。第二部を読みたいと切に願うよ」


ななせ「この物語は、一つのミステリーが解決して終りなんですよね。『選定』され、リソースになってしまった人たちがどこに行ってしまったのは気になりますね。純粋にこの世界観をもっと堪能したいという気持ちもあります」


七瀬 「おいおい、続きを望んで大丈夫なのかい? 僕は人が人を食べるなんて考えるだけで空恐ろしいよ……人類全員がレクター博士だと思うと……」バタッ


ななせ「あっ、七瀬さんが倒れた」


N氏 「ふむ。彼は血が苦手だからな」


ななせ「七瀬さんは、包丁で手を切って流れた血を見て、マジで失神したことがありますからね……そんなこんなで今回の『座談会』はここらへんでお開きにしましょう」


N氏 「非常に素晴らしい物語だった」



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