第65話 Please




もう3年くらい前になるかな?



ゴスペルのバックバンドの

バンドマスターしてた時の話。



大人50人と、小学校低学年から高校生までの子供たち50人からなる、100人ほどの規模のゴスペルクワイア。


このチームを主宰している市の職員に、俺の古い音楽仲間がいて、俺に白羽の矢が立った。


だいたい、ゴスペルのような、いろんなジャンルやスタイルの曲をこなせるプレイヤーはなかなか見つからないからねー。


俺は幸いにも音楽バカなので、ギターやベースやドラムだけでなく、金管楽器や木管楽器も一通り演奏出来るから、クラシカルなゴスペル曲を、ハリウッド的なブラスロックに編曲してほしいとの、市からの正式なオファーだった。


その年から、毎年クリスマスの夜に催される、クリスマスチャリティゴスペルコンサート。

クワイアの指導は、本場アメリカで活動中の有名な先生。


当時、俺はすっごいワクワクしていた。


でも、実際

顔合わせ初日に見渡してみると、ほぼほぼ素人の集まり。

目立ちたがり踊りたがりの主婦たちが集まって結成された素人クワイア。


明らかに、ほとんどの人たちが、ハリウッドのあの映画に憧れて参加したんだろうね。笑

頭にある理想ばっかり求めてて、ちっとも上手くなりやしない。涙


確かに先生は本当に超がつくほどすっごい有名なひとだったけど。

最後の最後まで困っていらした。笑


そのうち参加者たちは、自分たちで、練習のばらつきを無くすために“~委員”ってのを作りだして、仕事を分担して運営してた。


そう。

“仕事”ね。


うたのヘタ〇ソな中心人物は、何かと中央に居て、うたはカラオケレベルなのに、なんだかんだ仕切りを入れて、操作して、ソロまでとったりするし。笑


内部で、歌とは関係無いところで何度ももめて、あげくみんなで泣きながら仲直りしたり。笑


これじゃいつまで練習したって上手くはならないし、何より、純粋にGodのSpelはうたえないよなぁって思って、意味分かんなくなって、3年目辞めたんだけどね。笑


きっと

あの100人の中で

本当のことが解っていたのは、俺と子供たちだけ。



こんなことがあった。



俺は、30曲はあるセットリストの曲をプレイする時、曲を始める前に必ず十字を切る。


ちゃんとカソリック式の、“Cross my heart”をね。


子供たちはよく見てて


『なんでそんなんするの?』って聞かれた。



俺はこう教えてあげた。



『君らが誰かにもし一番欲しかったプレゼント貰ったら、すっごく嬉しくてその人に“ありがとう”ってお礼を言うだろ? それと同じで、おじちゃんは、神様にお礼してるんだ。 こんな素敵な曲を弾かせてくれてありがとうって、みんなと一緒にうたわせてくれてありがとうってね。』


そしたら子供たち。

みんなでcrossを切り始めた。



『なんで?』って聞いたら、

『今、すごい楽しいもん♪』って。


もぅ、全開で負けた。笑



俺はこの時ほど


音楽に出逢えて、それを楽しんで

表現出来る力を与えて貰えて

ほんとに良かったって想えたことはなかった。



そして


今年も

あのゴスペルクワイアは

苦しみながらも無事にショウを成功させたってニュースを、風の便りに聞いた。



楽しんで

それを感謝して

うたってくれてたら


嬉しいな。



ね。神様?








もしも僕たちが やさしさ失くせば

今度ばかりは神様?

あなたのミステイク。


愛を投げましょう 夜を止めましょう

未来の鍵は 神様

あなたのエスコート。




ASKA『Please』



Happy Christmas!!


Love finfen♪




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