面妖異形譚

帆場蔵人

第2話 マスク依存症?

もう何十年もマスクを着け続けてきた。別に花粉症があるわけじゃないわ。マスクをしていれば、恥ずかしくないからね。赤面したり、見られたくない感情の変化や、嫌になる程に大き口も隠せるもの。それにマスクしてると小顔に見えるのよね。あれ?マスクの替えを忘れてきちゃった。


「どうも姉さん。氏がない面売りですよ〜」


あら面売りさん、久しぶりね。マスクはあります?


「毎度、どうも。花柄、顔文字、キャラ物にノーマルな白いのまでありますよ〜」


あら、品揃え豊富ね。


「最近はマスク依存症なんて言われているくらいマスクの方がふえましてね〜。良く売れるんですよ」


そうなの?顔文字面白い。あたしに似合うかな?綺麗?


「綺麗ですね〜。似合ってますよ」


あら、これでも…?私はいつものようにマスクを外して尋ねた。


「個性的でチャーミングですよ〜」


面売りさんたら、上手なんだから〜。あ、この顔文字の一つと普通のを一袋もらいますね。


「毎度あり〜、またのおこしをお待ちしてます」


私はさっそく顔文字マスク^o^を着けてみた。中々、新鮮だわ。同業の子達にも進めてみようかしら。いつも同じじゃマンネリ化して飽きられちゃうからね。


私は心を浮き足せ、軽い足取りで今日の獲物を探して歩き出した。


「あれもマスク依存症て言うのかな〜。口裂け女の姉さん」


面売りは去りゆく背中を見ながら呟くのだった。

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