アプリ『ニンゲンGO』で始まる恐怖の新生活!!

ちびまるフォイ

ニンゲンを捕まえちゃった!?

最新のアプリが出たということでインストールしてみた。

『ニンゲンGO』というものらしい。


アプリを起動すると、ボールと現実の画面がスマホに映し出される。


「ああ、なんだポケモンGOのパチモンか」


残念な気持ちたっぷりに一応楽しんでおこうという貧乏性でボールを投げた。

画面にボールが飛んで、通行人の女性にボールが当たってつかまった。


「ニンゲンGOってそういうことね」


通行人を捕まえるゲームか。数回で飽きそうだ。

女性を捕まえると図鑑に登録されて手持ちニンゲンへと加えられた。



なまえ:メイド

タイプ:くさ


スマホから目を戻すと、女性がこちらをじっと見ている。

しまった盗撮でもしたと思われたか。


「あの、ちがうんです! これは……」


「ご主人様、これからよろしくお願いします」


「はい!?」


女はおごそかにお辞儀をした。

本当にリアルの人間が手に入れられるとまでは思わなかった。

俺とメイドさんの共同生活がこうしてはじまった。


が。


読者諸君が期待しているような甘々な生活にはならなかった。


「おはようございます、ご主人様」


朝起きるとメイドが起こしてくれる。

ここまでは男子が憧れるシチュエーションだが……。


「な、なんで武器をもってるんだよ!?」


「これもメイドのたしなみです」


「武装したメイドなんて聞いたことないわ!!」


メイドは確実に俺を殺そうとしている。そうとしか思えない。

きっと俺がアプリで強引にメイドにしてしまったから根に持っているのだろう。


「俺を殺して……ここから出るつもりなんだ!」


ああ、どうして捕まえてしまったんだ。

もうこうなったら何とかしてメイドを手放すしかない。


「くそっ! このアプリ、捕まえたニンゲンを手放すってどうやるんだ!」


ニンゲンGOの図鑑を見てもニンゲンを手放すようなアイコンはない。

一度捕まえたらもうずっと一緒なのか。


「待てよ? もう一人新しい人を入れたらどうなるんだ?」


もしかしたら上書きされて、殺意メイドを追い出せるかもしれない。

さっそく街に出てアプリをかざして通行人を品定め。


一番人畜無害で優しそうな人を選んでボールを投げた。

あっという間にゲットできた。



なまえ:サラリーマン

タイプ:じめん



「よし、これでメイドは消えて……ない!?」


図鑑から消えていなかった。

上書きもされていなかった。


単に新しくおっさんが仲間に加わっただけに終わった。


「ご主人様、新しいニンゲンですか」


「な、仲良くしてくれ……」


おっさんと、メイドと俺の不気味な共同生活がはじまった。

その翌日に終わった。


「ちょっ……おっさんをリリースした!?」


「はい。それが何か?」


「いや……別に」


捕まえたサラリーマンはすぐに手放された。

いったいどうやったのかはわからない。


でもその意図はわかる。

きっと俺を殺すために他のニンゲンがいると邪魔なんだろう。

変に逆らえばなにされるかわからない。


「ご主人様、今後ともご一緒に」


メイドの背中に隠された武器がぎらりと光る。

"逆らえば殺す"という意思表示にも思えた。



「待てよ。どうやってサラリーマンを手放したんだ?」



メイドは俺のケータイを使ってサラリーマンを追い出せた。

その方法があるはず。メイドを追い出す方法が。


メイドに感づかれないように外でアプリを操作する。


「……くそっ。どうすれば手放せるんだ!」


単純な画面なだけに何もわからない。

図鑑とボールを投げる画面。


図鑑のメイドに指を合わせてスライドさせると、ニンゲンが移動したのがわかった


「なんだこれ……?」


なんとなくボールの方までスライドさせる。

すると、メイドがボールの中に吸い込まれた。図鑑にはいなくなっている。


「おおおお!! これか!? このままボールを投げれば手放せるかも!」


スマホの画面で誰もいないことを確認してメイド入りボールを投げる。

これで殺意メイドともお別れだ!



ボールを投げると画面に文字が流れた。



『いけっ! メイド!』


その瞬間、メイドが出てきた。

それを見て通行人のひとりが急に足を止めて振り返った。


「ほほう、貴様。ニンゲントレーナーか!

 いいだろう、このニンゲン勝負、受けて立つ!!」


「えええええ!?」



通行人:サトシ がしょうぶをしかけてきたっ。



「はあああ!?」



サトシ:リアジュウ きみにきめたっ。



今度は相手がチャラいニンゲンを出してきた。

なんだこの展開!?


「ご主人様は私が守ります。メイド☆ジャスティスアタック!!」


メイドはいつも隠し持っていた武器を使ってリアジュウを撃退した。



通行人:サトシ をたおした!



「ふっ……負けたぜ。いいメイドさんだな。大事にしなよ」


通行人は去っていった。

なんだこの展開!?(2回目)


やっとわかったのはニンゲンGOは対戦式だったらしい。

そして、メイドは……。


「ご主人様を守るために日々研鑽に勤めておりました」


「それで武器を持っていたのね……」


「ご主人様は私が守ります」


誤解がとけると殺し屋に見えたメイドが優秀なボディガードに見えた。

ニンゲントレーナーの俺とメイドとの共同生活はこれからも続いていく。






「え? でも、どうしてサラリーマンを追い出したんだ?

 手持ちのニンゲンが多い方がずっと強いのに……」


「それは……」


メイドは頬を赤らめた。



「私だけがご主人様のそばにいたいですから」


俺は結婚を決めた。

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