第6話 クエスト開始
イサベラたちは、王都の市街地から、「
絶壁を斜めに真っ直ぐにくり抜かれて作られたこの階段は、下りながら海が一望でき、海側の柵の合間を何本もの太い柱が支えている。テンポよく下りると、朝日に反射した海の光が規則正しく柱の間から瞬くように射し込み、まるで
「(きれい・・・)」
「見とれていないで、早く下りるわよ!」
エミリアとは、とりあえず会話はできるようになったが、友達かといわれれば、まだ微妙だ。イサベラといる時は基本的にイライラしているし、いちいち言葉にとげがある。カローナ先生は実戦を潜り抜けて仲良くなれると言ったが、イサベラとしてはクエストがうまく行っても仲良しこよしの未来が見えない。
「
クエスト1:『スライムの
イサベラはもちろんスライムと戦ったことはないが、最弱モンスターの代名詞であることは知っている。「
魔術師なら、簡単な攻撃魔法一つでも使えれば、難しい相手ではないだろう。加えてイサベラは準備の一日で新魔法を習得していた。「
特殊な処理を施した犬の骨を媒体にして、アンデットを召喚し使役する「
階段を下りきり、小さな港町を通り過ぎると、地下宮の入り口が見えてくる。「宮」というだけあって、意匠の施された立派な石造りの柱が入り口を支えており、広い石畳の廊下が奥まで続いている。洞窟の魔物たちは陽の光を嫌うので、洞窟の外にはまず出てこないが、冒険者の出入りを念のため把握するため、柱の前には二人の衛兵がいる。基本的に平和なためか、暇そうにぼんやりと海を眺めている。
「
二人は、入り口で衛兵に呼び止められた。
「お嬢ちゃんたち、魔法学校の生徒さんかい?若いのにたいしたもんだなぁ。ほらここ、入る時はここに記帳してもらっていることになっているんだ。よろしくー。」
イサベラが分厚い記録台帳に名前を書くと、いよいよ始まったという実感と共に、鼓動が早くなるのが分かる。緊張しているのは、エミリアも同じようで、少し落ち着きがない。
「第一の間なんて、ほとんど観光地でしょ?楽勝よ!いい?昼前には終わらせちゃうわよ!足引っ張らないでよね。」
「うん、
クエストが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イサベラとエミリアがいよいよ地下宮のスライム狩りに挑戦しようとしていたころ、カローナとディアードは樹魔法館のディアードの部屋で午前の授業の準備中だ。
「う~ん、やっぱり途中で様子を見に行こうかしら・・・。」
「あらだめよ~、私たちには授業があるじゃない。衛兵もいるし大丈夫よ♡。それにスカルドッグを3体もあげたんでしょ?可愛いイサベラちゃんには甘いわよねぇ~♡。過保護よ。か・ほ・ご♡。」
「なっ!ディアードこそエミリアに
「まあ!怪我は無いに越したことはないじゃない?」
「はいはい、そうでちゅね~。怪我しちゃ駄目でちゅね~。」
「・・・あら、でも私は弟子を信じているから、途中で見に行こうとかは思わないわ~♡。カローナは行ってもいいのよ?んん?」
「だれが!様子見はやっぱり無しよ、無し!」
二人の過保護な魔術師は、お互いをけん制するように一瞥すると、それぞれの担当授業に向かっていった。
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