002

 天から垂れ下がる蜘蛛の糸。その先は空高く、雲の上クラウドへとつながっている。そこは複雑に張り巡らされた蜘蛛の巣ウェブのようでもある。

 そして、そこには無数の蝶の群れクラウドが絡め取られている。

 蝶の群れクラウドクモの王国クラウドに、それぞれが自分自身の領地アカウントを占有している。領地アカウントにはけっして他者を侵入させない敷地サイトもあるが、おたがいの領地を行き交って語り合える場所も少なくない。雲は自由に宙を漂うので、気が合う者同士はより近づき、そうでない者同士は離れていく。

 もっとも、俯瞰して見れば結局ひとつのカタマリなので、根の部分では土地を共有する王国民同士なのだが。

 空をたゆたいながら、蝶たちは夢を見る。垂れ下がる蜘蛛の糸の先にある、地上の出来事を。

 ある日突然、糸がプツリと切れるその瞬間まで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る