カマキリ紳士

ふたぎ おっと

深夜テンションの賜物

 俺はカマキリ紳士。


 鋭い目つきと細マッチョな身体でちまたでそう言われている。

 一部のやつらは俺のことを鬼畜とも言っているが、やつらは俺のこと全く分かっていない。

 この紳士をつかまえて鬼畜とか……やれやれだぜ。

 そんな俺のいいところは、困っている人を助けること。


 あ、あそこに泣いているJKがいる。

 これは悩みを聞いてやらないと。

 ふむふむ、好きな人に振り向いてもらえなくて困っているのか。

 JKならよくありがちな悩み事だ。

 これは上手い具合に解決に導いてやらないと。

 と、話を聞いているだけだったのに、彼女の反応がおかしくなってきたぞ?

 ん? あれ? 好きな人の話だったはずなのに、まだ帰らないでと腕を引いてくる。

 あぁ、この子、俺に落ちたな。

 たしかにこのキれる瞳には落ちてしまうのも無理はない。

 ちょろいな。

 なんとか言いくるめて彼女を家に帰す。


 そして俺もまた別の場所へ移動する。


 あれ? またあそこでJCが困っているぞ?

 これはだめだ。JCこそ俺の出番だ。

 よーし、お兄さんが話を聞いてやろうじゃないか。

 ふむふむ、なんだ。

 友達とけんかしちゃったのか。

 まぁ確かに女の子にはよくある話だよな。

 これは、また大人の男である俺が解決法に導かないといけないな。

 おや? またまたJCの反応がおかしいぞ……?

 友達との悩み話を聞いているだけなのに、俺の胸に飛び込んできたぞ?

 かわいそうに。泣いてしまうほど、悩んでいたのか。

 俺の胸の中で安心しな。

 俺は優しくJCを腕の中に包み込む。

 あれ? 気がついたらJCは泣きやんでるぞ?

 だめだだめだ。これ以上抱きつかれたままだと、俺のアレがダメになる!

 紳士な俺はこんなところではJCを襲うわけがないので、彼女を引きはがす。

 しかし、JCは不満げな顔で俺を見上げる。

 何だ、その顔は。と聞いてみたら、まだ帰って欲しくないのーとだだをこねる。

 しかし、大人の俺は大人の余裕を見せなくてはいけない。

 だから俺のアレがダメになる前に、俺は優しく諭して彼女を帰す。


 そして俺もまた目的地に向かう。

 目的地にはまだまだ着かない。

 

 おやや? またまたまた、あそこで泣いているJSが。

 こーれは紳士の出番だぞ。

 おじょーちゃん? なーんで泣いてるのかな?

 ん? リコーダーをなくした?

 そうか、それはお兄さんが探してやらないといけないな。

 あれ? でもリコーダーは俺の……いやいや、何を考えたんだ。

 俺は紳士だぞ?

 一緒に探してやろう

 ということで、小学校からの帰り道を一緒に歩きながらリコーダーを探す。

 もちろんJSと手をつないで。

 ん? だって必要だろう?

 迷子になったら大変だ。

 しかし、俺のそんな優しい優しい気遣いは、突然現れたオバサンに止められた。

 オバサンは俺に向かってなんかガミガミ言ってくるぞ。

 うるさいな、このババァ。

 このカマキリ紳士に向かって何を言ってるんだ。

 しかしやっぱり俺は紳士なので、たとえアラフォー的なアラフィフ的な女性でも俺は丁寧に相手する。

 この子を無事に送り届けようとしていたんだということをオバサンに説明する。

 するとなんと、この子はオバサンの子供だったようだ。

 オバサンは俺の優しい気遣いに気がつくと、さっきまでのガミガミは何処に行ったのやら、にこにこ笑顔になる。

 そしてオバサンはお礼に家にご飯食べに来ないかと誘ってきた。

 さすがに最初は断っていたが、おばさんがしつこく言ってきたので、俺はその誘いに乗ることになった。

 俺はオバサンとJSと一緒におうちにお邪魔した。

 そしてご飯を出してもらって和気あいあいと食卓を囲んだ。

 するとJSがすぐに眠くなったようで、自分の部屋に戻っていく。

 家のダイニングにはカマキリ紳士の俺とオバサンのふたり。

 おお? オバサンが俺にもたれかかってきたぞ。

 ご馳走になったし俺はそろそろ帰ろうと思ってたんだけど。

 しかしオバサンは俺にしなだれかかったまま離れようとしない。

 これはやばいぞ。熟女の色気が俺のアレを刺激している……。

 なんとか彼女を引きはがそうと俺はオバサンの肩を強く掴む。


 ――――――すると。


 がちゃ。


 しまった。

 旦那さんが帰ってきた。

 旦那さんはこの光景を見ると、つかつかと歩み寄ってきて、オバサンを俺から引きはがす。

 そして旦那さんはケータイ電話を取り出すと、どこかに電話をかける。

 なんだこの状況は、これはなんとなくやばい気がするぞ?

 すると外からファンファンファンファンという音が聞こえてくる。

 そして家のインターホンが鳴ると、旦那さんが俺の腕を掴んで玄関の方へ引きずる。

 玄関の外へ行けば、数台のパトカーが。

 あれ? 俺、これやばくないか?

 しかし俺はカマキリ紳士。

 サツに突き出そうとしてくる旦那さんの唇を奪う。

 するとその場の全員は一瞬にして固まった。

 その隙を突いて俺は素早くその場から離れる。


 後ろからパトカーが追いかけてくる。

 俺は焦って逃げる。


 しかしそこでまた俺は気がついてしまった。

 曲がり角のところでJDが泣いていることに。

 心の優しい俺は見逃すことができない。

 思わず俺は悩みを聞こうと彼女に話しかける。


 ――すると。

 

 ガチャ。

 

 ん? 気がついたら手に金属の輪がかけられている?

 これは…………てっ手錠!?

 見ればJDはにやりと笑って俺を見上げている。

 そして俺に言ったのだ。


「つかまえたよ♪ か・ま・き・り・さん?」

 

 こうして俺はJDに扮したヤンデレ婦警に捕まって署まで連行されて行ったのだった――。

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カマキリ紳士 ふたぎ おっと @otto_futagi

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