第6話不思議な小箱

 幸せホームに勤め始めた時に世話になった人物には研修が終わった後も世話になっている。幸せホームで起きる不思議な霊障について教えてくれたのも彼であるが、例の居酒屋前で出会った占い師と黒い小箱に関係する不思議な体験談を相談した。

 不思議さに脅えていた。

 あまりに事実を指摘をする内容にあの占い師が自分の父の生まれ変わりではないか思うと打ち明けると、聞き手は眉をひそめて、似たような話を聞いたことがあると言った。

 そして白い小箱にまつわる話をしてくれたのである。

 三年ほど前のことです。不思議な占い師のことについて聞いたことがある。高齢であり、黒いフード付きのマントに身を包んでいることも、水晶球やトランプも持たないことも同じである。ただ占い師が女性であり、白い箱を机の上に並べて客を待っていたことが違う。話をしてくれたのは私が初めて教えた人物でした。彼は、毎日、単純なミスを繰り返し、深刻に悩んでいた。

 そのような時に、その占い師に会った。彼は箱を買い求めた。そして占い師から言われたおり、失敗をした時には手を筒状に軽く握り、箱の中に話しかけたのです。例えば患者さんの機嫌を損ねたとか、水をこぼしてしまったとかです。箱に失敗を告白した後は、肩の力も抜け失敗の原因が遠のいたと言う安堵感を味わったと言うのです。失敗を繰り返す者の心理の根底には焦りや、失敗体験、脅迫観念、無駄な緊張感、自信喪失などがあるのです。繰り返すうちに周囲の信頼を失い、人間関係さえおかしくなります。それらが取り除かれたように気になったと彼は打ち明けたのです。しだいに彼は失敗を繰り返さないようになりました。それに反して白い箱が黒く変色していくのです。

 話を聞いて一週間ほどして何の連絡もせず彼が仕事を休んだのです。虫の知らせと言うか嫌な予感を感じ、部屋に駆けつけたのです。予感したとおりでした。彼は首をくくって、すでに冷たくなっていたのです。足元には黒い小箱が一つ転がっていました。

 彼が突然、死を選んだ理由ですが、公的には仕事に慣れた後に訪れる解放感で人生の空しさを感じたせいだと説明されています。

 ところが実は違うのです。

 実は箱を買い求めた時に占い師から白い箱が黒くなった時には新しい箱を買い求めず、黒い箱をそのまま使い続ければ不幸になるので、必ず返しにくるように警告されていたにも係わらず彼は、そのまま使い続けていたのです。

 そして、彼が箱の閉じ込めた失敗が一片に飛び出し、彼は自信を失い死んだのです。

彼女の警告を無視したのです。

 その瞬間に黒い箱は、元のように真っ白い箱に変わったのです。

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