第16話 途切れ…途切れ

 もし…彼女と僕の間に『赤い糸』が繋がっているのなら…きっと途切れては結び…千切れては結び…きっとデコボコでいびつな赤い糸。

 いや…赤い色はしていないかもしれない…。

 僕と彼女の出会いには何か意味があるのだろうか。

 赤い糸が運命の相手…運命とは何も結婚の相手とは限らない…きっと…。

 ツライ運命の出会いもあるはずだ。


 運命は…素敵な出会いの繰り返しではない。

 でも…避けれない出会いもある。

 それだって運命だと、僕は思う。


 もしも…彼女と出会わなければ…。

 僕の今は変わっていたのだろうか。

 幾度も捨てようとした、断ち切ろうとした、この糸は…僕の指に絡みついて離れない…離せない…。


 こりずに明日も送迎する。


 今日とて…3つ離れた市に居る彼女を迎えに行きたい…逢いたいと思ってしまう。

 バカだ…。

 恋が人を愚かに変えるのだろうか…違う…愚かだから恋をするのだ。


 バカならいい…死ねば治るらしいから、死んでも治りそうもない…僕の場合は…。


「迎えに行きたいよ」

「大丈夫だよ、送ってもらえるから」

 来いと言われたら行っただろうか…。

 来てと言えば、また僕が愚痴ると思っているのだろう…以前ほど簡単に送迎してくれと言わなくなった彼女。

 僕も寂しい思いも…不安な思いもあるが、それでいいと思っている。


 以前ほど、僕に頼みごとをしなくなった。

 それは、僕のせい…僕への気遣い…。

 寂しいといえば寂しいし、彼女に逢えば、しなくてもいい嫉妬紛いの感情を揺さぶられる。


 僕は彼女と何をしたいのだろう。

 彼女は僕と何がしたいのだろう。


 交わらない想い辿って行く末は…結末ははなばなれなのか…。

 重ならないのは身体だけじゃない…心も重ねられない。

 そんな思いが頭を過る…空を遮るオーロラのような、それは美しく…それは無慈悲に空を切り裂くカーテン。

 見上げれば美しく…触れることは叶わず…その身を曝け出せば…凍え…命を落とす。

 雪女の心は命と引き換えでしか手に入らない…。

 せめてもの救いは…その腕に抱きしめられながら死ねること…。


 僕は死にたい…。

 毎時間…毎分…死を願う。

 生きていることを実感する目醒めを嘆き…二度と覚めぬよう願いながら浅い眠りに堕ちる。


 なぜ…殺してくれないのだろう。

 なぜ…生かされているのだろう。


 行けども…行けども…堕ちていくだけ…。


 自分の価値というものは他の誰かあってこそ視えるもの。

 独りでは良し悪しすらないのだから。

 だから僕は自分に価値を見出せずにいる。


 何かが欲しい…ナニカが解らない…。


 僕は…彼女を通してフィルター自分の存在を確認したいだけ…。

 彼女の特別だという証が欲しいだけ…。

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