お化粧と発表会

普段のレッスンと違って、バレエの花の中の華、発表会。

優雅に、美しく、風になり蝶になり、きらきらの照明を浴びて美しく舞い踊るところ。

なのですが、それは大人のバレエ団の話でありまして、

子どもたちがたくさんいるバレエ団の発表会は「お稽古事でしか会えなくてふだんなかなか遊べない友達と一日中遊べるイベント!」であります。

発表会を楽しみにしているママたちごめん。


チュチュに着替える前も可愛い発表会ワンピースを着せてもらって、がんばったらご褒美があるよとか言われて、そりゃあもうただ楽しいだけです幼稚園くらいまでは。


しかし舞台用お化粧、あれだけはいただけない。

子どもでも容赦なくファンデーションを塗ります。手と顔ぜんぶ、あと肩からデコルテまで塗ります。リキッドタイプなんてものではなく、水をつけたスポンジにファンデーションつけて一気に塗る!それはもう塗装!

水を塗りたくられるようなものなので、冬はすごく寒いです。においも甘いような絵の具のような、なかなかすごいにおい。苦手だったなあこれ。

眉毛まで見えないくらい一度真っ白にされます。

そのあと行列にならんで、まゆげ書いてくれる先生の列、口紅ぬってくれる先生の列、シャドウ入れてくれる先生の列、みたいにみんなで順番に並んで顔を作ってもらいます。

やること順に列を作って並んで待つ、集団健康診断みたいなイメージです。


最後はアイメイクしてくれる先生の列。

これがメイクの花です。たいてい一番えらい先生が直々にやってくれます。

もともとの目の形に関係なく思いっきり大胆に書かれるアイライン、というか目の形は、チョウチョのようでもあり、かなり独特。街で見るようなお化粧ではもちろんなく、和の舞台のメイクとも違う、バレエの舞台ならではのアイメイクです。

うーん、いくら書いても説明できない。ぐぐーる先生に聞いて(語彙力を投げ出した顔)。

ただし粘膜に書かれるアイラインなんて小学生以下の子どもが喜ぶはずもなく、何するんだウワアアアアってなる子が多くて(目に突っ込まれそうで怖い)、わたしもこの工程がすごく苦手でした。お化粧タイムは怖い思い出しかないなあ。


お化粧が終わった後は衣装リハーサルしたり、はないちもんめやったり、前に書いたチュチュのスカートのところを台にしてトランプやったり、遊びの時間。

泣いたり食べたりするとお化粧が流れて顔が真っ黒悲惨なことになるので、小さい子を不用意に泣かせず遊んでやるのが小学生くらいの小さいおねえさんたちの役目だったりします。

廊下には衣装がずらっと並び、早着替えや集団お着替えに対応できるよう、機能的にまとめてあります。

舞台用衣装だからキラキラ。

ここぞという時にしか出てこないティアラやおうぎは、高校生くらいのお姉様方や先生が舞台で使う小道具なので小さい子たちは羨ましく見るだけです。でも本当に綺麗だった。

小さい子のティアラは針金曲げて手芸用のキラキラビーズつけただけだもんね。そのティアラも大きくなって上手になり、いい役がもらえるにつれてだんだん豪華になるので、憧れと尊敬と誇りの象徴でもありました。個人的に。

あとは写真屋さんが来て全体と個人の写真撮ったり、お昼ご飯食べたり(助六弁当に烏龍茶、地味)、がやがやと過ごす雑多な時間が過ぎます。

一緒に何かを作る人たちの舞台裏って感じがして、わたしはすごく好きだった、このがやがや時間。

手もファンデーション塗ってるからトイレ行ったり何か食べたりしてお化粧落ちたら塗り直しますよ、口紅もよくとれる。ぬりぬり。


本番が近くなると、本番用のバレエシューズ(ぴかぴかつやつやサテンのバレエシューズ。普段のは綿だから、この日のためだけに一足買う)に履き替えます。ここから誰かの足は踏んじゃダメ。サテンのバレエシューズは汚れがつきやすいのです。


本番は……実はあんまり印象がありません。

ただ舞台用の照明がかなりきつくて普通にしてるとしかめっ面になります。なにがなくともとりあえず笑顔。


終わるとお花がもらえて、親の買ってきたおもちゃがもらえたりします。がんばったねってことで。


舞台用の化粧を落とすのは、ベタベタのクレンジングでおおまかに落として、そのあと化粧水で拭き取って、顔を洗ってもう一度化粧水を塗ります。

アイメイクは下手に崩すとボロボロと剥がれたアイラインが目の中に入ってとても痛いので、コットンにクレンジングをさくらんぼ大に乗せて鼻のあたりから目尻まで一直線に拭き取ることが大切。

いくら上手く拭き取っても二日くらい目やにが黒いので、舞台用アイラインの強さはすごいのです。

ちなみにこのクレンジングも幼稚園くらいの子なら自分でやります。厚塗りの化粧を落とすことにかけてはプロだった、わたしの幼稚園時代でした。


お化粧落とすの、楽しかった……(すっきり感大好き)。


なんだかたくさん読んでいただいたバレエエッセイなので、追加してみました。読んでくださってありがとうこざいます。

次書くとしたら……日常のレッスン風景かなあ。

それではまた。

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バレエシューズとこぼれ話 花ほたる @kagimori123

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