青春のほろ苦い全てを糖衣で包んだ、珠玉の王道ラブコメ

ラブコメとして出色の出来であるだけでなく、青春物の王道テーマをラノベ・Web小説のフレームに上手に流し込んだ、という意味で『とらドラ!』以来の衝撃を受けた作品。

ラノベ・Web小説の手軽に摘めるお菓子のような読み口を保ちながら、自分が自分として生きていく覚悟を、甘酸っぱい恋愛模様の中で登場人物たちが悶え足掻きながら摑んでいく、という青春の大テーマを正面切って描いている。

『とらドラ!』が、恋愛への幼稚な幻想を打ち砕かれながら足掻く青春、とすれば、本作は、他の誰でもない「私」であることを、恋愛に悶えながら受け入れていく青春、だろうか。

変てこなこだわり、思いもしなかった自分や他人の側面への戸惑い、嫉妬と自己嫌悪、そしてコントロールできない感情。これぞ青春。

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