誰かに手を掴まれて物語の中に引っ張られていく。

丁寧な描写で物語への引き込み方が強く、雰囲気を楽しめる作品です。真っ白な雪国の世界と、物語にぽつぽつ出てくる黒いものとの対比にぐっときます。
それから水晶さんの話はいっつも、「おおお……」と思うような比喩があります。
(本文からの引用有りなので、ここから先のレビューは読んでから推奨です。)


「黒煙を吐き出す黒い箱は、祖父を飲み込んだ棺であった。」
これ今作で一番好きな比喩です。
物語世界は雰囲気よくまとまっているので、欲を言えばもうちょっと登場人物の心の動きみたいなものも見てみたかったかな。あえて書かないことで想像する楽しみも広がると思うので良し悪しかもしれないですが。
余談的な話だと、同じ北陸民としては雪の描写があるあるで嬉しいです。