屁理屈

屁理屈

「アワビくん、ちょっと、いいかな？」

「なんですか？　ホッキ貝さん」

「軍艦巻きって、あるじゃない？　あれ、おかしくね？」

「何でですか？　シャリにネタを乗せて、海苔で巻いて、軍艦に見立てている……。何も、おかしい所は無いですよ？」

「いや、だってさ……海苔で巻いてから、やっと軍艦の形になるわけじゃん？　そこから、その出来上がった軍艦で何かを巻かないと、軍艦巻きとは呼べないんじゃあないかなぁ？」

「……屁理屈をこねないで下さいよ」

「あと、シメサバって名前もおかしくない？」

「バッテラのネタの事ですか？　鯖を、お酢で締めているから、シメサバですよね？　何も、おかしくないと思いますよ？」

「だって、酢飯をシメメシ、酢牡蠣をシメガキとか呼ばないじゃん？　なのに、酢で締めた鯖がシメサバって呼ばれるのは、変じゃない？」

「シメガキとか言ったら、児童虐待みたいで語呂が悪いじゃないですか？　スサバも何だか言い辛いし……。まったく、また屁理屈をこねないで下さいよ……」

「あと大トロ、中トロとか呼ぶのに、何で小トロって言わないで赤身って言うのかな？　赤身だって、少しぐらいトロっとしてるじゃん？」

「小トロだなんて呼ばれ方じゃ美味しく無さそうで、売れないからじゃないんですか？　まるで、外れ部分を摑まされているみたいじゃないですか……？」

「……なるほどなぁ」

「さっきから、何なんですか？　屁理屈ばっかり、こねて……」

「こねてなんか、いないよ？　寿司ネタの屁理屈だけに、握っているんだよ」

「お、お後が宜しい様でとか、言わないんだからねっ！？」