これぞ現代のスクール・ウォーズ。弱小運動部を花園へ!

何の気なしに働くコン応募作をズラーッと眺めていたら、気になる題名が目に止まりました。

『オレたちが人工知能を超えるとき』……?

AIと戦うのかな?
将棋やチェスのお話かな?

……なーんてクリックしてみたら、とんでもない。
熱血教師が弱小ラグビー部を更生する熱血ストーリーでした。

まずはこの意外性に着目しましたね。ラグビーで人工知能? 一体何だ? 俄然興味が湧いてきます。
題名とキャッチコピーで目を惹くという、ウェブ小説に欠かせない「最初の掴み」が大成していると言えるでしょう。これだけでも筆者のセンスが眩しいです。
(2017/12/19注釈・現在はタイトルを改題なされたようですね。今の題名もシンプルでスッキリしていると思います!)

肝心の内容も、角川文庫を意識して書いているのがよく伝わります。
語彙の豊富な、情報量の詰まった文体。
僻地へ赴任した主人公教師のカルチャーショックは、主人公を通じて読者に判りやすく追体験させてくれます。

何よりもラグビー部員たちとの折衝が面白い!
田舎のお気楽ムード、部活を遊び感覚でエンジョイするだけの生徒たちは、本気で花園なんか目指していません。そもそも田舎の高校は人数が集まらないという現実的な問題もあり、容赦ないリアリティが追い打ちをかけます。

少人数の7人制ラグビーなら、地元で優勝できる程度には才覚を持っている部員たち。
メインストリームである15人制ラグビーに出場できるのか。
題字の人工知能とは何なのか?

教師モノという、ともすれば手垢の付いたド定番な職業ですが、変に奇をてらったマイナー職よりも格段に想像しやすく、リーダビリティの高い小説に仕上がっていると感心しました。
田舎へ赴任したせいで、恋人と遠距離恋愛になってしまった哀愁もリアル……。

文句なしにオススメです。全話に応援コメントを書き込むくらい好きです。頑張れ三谷先生!

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