第9話 フリキル


「二日後。陽が天上に昇る頃。 

   一緒に来るなら、広場に。」



 そう言ったのが、つい昨日のことだ。

 昨日は酒場で、そのまま自然解散となった。


宿屋に戻ったとき、意識はほとんど無くなっていたイリスは、倒れるように眠りに就いた。


(...腰、痛ぇ...。)

イリスに意識が戻ったのは、空が茜色に染まり、影法師がいくらか大きくなった頃だった。

虚ろな意識を総動員して状況を整理する。

(玄関... 剣も... 帰ってきて...そのまま落ちたのか)


 イリスは一度大きく伸びをして、部屋に上がった。

疲れを取るのも大事だが、今やるべきはそれじゃない。出発の支度をしなくては。幸いにも、傷薬はいくつか残っていたが、先を考えると買い足すほうが良いだろう。


 店が閉まる前に、とイリスは町に繰り出した。


 ~~~~~


「へぇ、あんた、もう行っちまうのかい。」

「ええ。短い間でしたがお世話になりました。」

以前訪れた店の、父さんを彷彿させた店主に細やかながら別れを告げた。

傷薬と回復POTポーション を10個ずつ購入したら、餞別だと言って、一つずつオマケしてくれた。

「ありがとうございました。」と頭を下げて店を出た。


 他にも、麻痺治しや毒消しを買い、洞窟までに迷った覚えがあるので、この地方の地図も買ったのだが、、鞄の中には、すでに地図が入っていた。

地図二つ...。


粗方買い終えて宿屋に戻る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。


 ルークは着いてくるのだろうか。

 イブキにはそんな素振りはなかった。


故郷から今までずっと一人で、心細かった。寂しかった。本音を言うなら危険を承知で一緒にきてほしいのだが、、、強制は出来ない。


考えをリセットするかのように、イリスは、今度はちゃんとベッドの上で眠りに就いた。


 明くる日は、次に向かう町とそこまでの道のりを決めた。ここより東部、軍事国・カリファがとりあえずのゴール地点だ。そこまでに、いくつか町やダンジョンと呼ばれる区域も通過する。麻痺治しや毒消しが役立つだろうな。

カリファは王城地区と同等に発展している国だ。

魔王のヒントも掴める可能性が高い。


しかし、ここからはとても遠い。


出発までの残り時間は、ゆっくり休むことにしよう。




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