第7話 ナニモノ

 ...嘘だろ、おい。

 あいつ、ほぼ素手で

 一撃でゴーレム倒しやがった...!


ふと目を逸らすと、目の前のドラゴンと目があった。さすがに、洞窟内なので表情は読み取れなかったが、これだけは判った。

...ドラゴンが引いてる...。


 イブキは、ふぅと一息吐くと、そのまま此方に歩んできた。目の前のドラゴンなど意に介すこともなく、俺を軽々と抱え上げた。

 ...もう、ドラゴンが無言で退いてんじゃねぇか...。

挙げ句、「もう!乙女ひとり遺さないでよねっ!」

などと言っている。


俺の知ってる乙女は、一撃でゴーレムを倒したりしないし、ドラゴンをビビらせることもない。


その旨を正直に彼女に伝える勇気は持ち合わせていなかった。

さらには、乙女と言った自分の言葉を忘れたかのように、俺を豪快に担ぎ上げたまま洞窟の入り口へと引き返したのだった。


当の俺は、ただ黙って運ばれるしかなかった。


 ~~~~~


(...進みたくねぇ...。)

洞窟に入ったものの、そこから先に進めないルークが居た。その辺りを一頻ひとしきりうろうろした後、やっと進もうと決心できたその時、前方-ちょうどルークが向いている道-から誰かが歩いてくる。


もしかしてという期待は泡のように消えた。

代わりに目の当たりにした光景に目を疑った。


 イリスが担がれてくる...!


どこか自信に溢れていて

そのくせ、人の弱点をすぐに見破るような

少し生意気なあのイリスが。


「え?イリス⁉」

「あら、知り合い?危ないから出た方がいいわよ~」

「あ、ああ、はい。」

 女の人。と、近くに飛んでる小さいアレはドラゴンだろうか。

 パッと見華奢な彼女に、ひとまず着いていくことにしよう。イリスはほぼ人質だ。



「ふぅ~。出れたわねぇ~!」

「...そうだな。だからそろそろ降ろしてくれるか?」

「い、イリス、無事なの?」

「おー、ルークか。さっきぶり。俺なら無事だぞ。」

「...とてもそうは見えないよ。」

「ねぇ、イリス?だぁれ、この人?女の子を仲間外れにしちゃダメよ~?」

「...俺の目の前に女の子は居ないとおm...」

「...なんか言った?」


「なんでもないっす...」











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