第3話 キンパツ

「おい、ボーっとしてんなよ!」

「あぁ、すみません」

 どうやら、少し長めの回想に入っていたらしい。

 道を譲ろうとして、振り返った俺は目を見張った。

 ド派手な金髪。壮健な体格。整った顔立ち。

町で旅人を見かけるのは、決して珍しくはない。

珍しくないはずなのだが、そいつは、どこか違和感があった。

少し、鎌をかけてみるか。

俺は、自分の肩を指さしながら

「虫、ついてますよ。」

「っどぅえ⁉え、ちょっ、お?」

慌てすぎだろ。もう少し攻めてみよう。

「...見たところ、冒険者の方ですよね?少しお話を聞きたいんですが、良いですか?」

「いいぜ。特に予定もないしな。」

よし、釣れた。

釣れたのは良いけど、切替早すぎで、もはや別人だ。


「イリス、剣士ウォーリアーです。」

「ルーク、銃士ガンナーだ。話すなら、そこの広場でいいか?」

「ええ、行きましょう。」



「どうぞ、飲み物です。」

「あぁ、ありがとう。で?何を聞きたいんだ?」

「魔物、特にオーガとゴーストについてを。」

<ゴースト>という単語に、ルークの頬がわずかにひきつったのを俺は見逃さなかった。


 ルークは、淡々と説明してくれている。

オーガは鬼属の魔物、角が弱点。

ゴーストには物理攻撃が効かない、

魔法や属性付与武器の攻撃は通る。

そして、この近くに洞窟があり、ゴーストが出る。


「なるほど。 これから、その洞窟に行きたいんですが、」「行かないからな!」

食い気味に返事が返ってきた。どうやら、予想は当たっていたようだ。...どこかデジャヴだ。

「怖いんですか?」

「...! バレてたんだな。。あぁ、俺は、いや、...僕はものすごくビビりなんだ。克服したいんだけどね...」

ルークの突然のカミングアウトだったが、薄々気付いていた。

「俺は、その洞窟に行きますよ。」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る