今すぐ課題図書に!もしくは映画化しましょう!

完全に引き込まれて二日間で完読してしまいました。おかげさまで自分の創作は一つも進んでいません。被害は甚大ですw

ライトタッチな恋愛要素と、広く認知された歴史ネタ、そして個々のキャラクターの濃さが織り成す本作ですが、僕が思う最大の魅力は『一人称が自立している点』だと思います。

三人称でよく見られる修辞的な表現や複雑な語彙の一切を取っ払い、等身大の女性視点から進行する物語。しかし、日常的に僕らの思考の中で選択されている凡庸な言葉たちが、『無駄なく、矛盾なく、自然な順番で』紡がれる事によって、ここまで自立した物語が生み出されている事に驚きを禁じ得ません。

誰もが陥りがちな『物語を進めるための思考/プロットを消化するための主人公』という構図から完全に脱却し、『思考の果てに選ばれる物語/次のプロットを生み出す主人公』という生きた姿が描かれていると思います。並大抵のセンスではこの域には辿り着けないかと。

「次にこの子は何をしでかしてくれるんだろう」
このワクワクこそ物語の醍醐味であり、読書の面白さでしょう!

「私たちは世界を──」では化学の授業を。
「男子高校生──」では保健体育(笑)の授業を。
そして本作「王子様には──」では歴史の授業をして頂いたタイラさん。
深い感謝と共に、これからは教授と呼ばせて頂きますネ。

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