誰が殺したクック・ロビン(3/6)
死に装束って、僕が祐司に新しい服を着せてあげたこと? はい、それならそうです。だって血まみれのまま埋めたら、祐司が可哀想でしょ? はい? だから、そうです。僕が公園に穴を掘って、埋めようとしたんです。夜、見つからないように黒いビニール袋に入れて運んで穴を掘って……。
ビニール袋が棺桶か、ってどういうことですか? マザー・グース? 夜でなければトビが運んだのに、って? ええ、知ってます。ベスとは仲がいいですから。「夜を徹してでないならば 私が担ごう 棺を担ごう」ですよね。けど、鳥のトビがどうやって棺を担ぐんでしょう。変な歌ですよね。
そんな歌はどうでもいいけど、大変だったんですよ。こういうときに限って、ベスはちっとも助けてくれないし。でも、まあ、祐司の漏らしたオシッコはいつも綺麗に掃除してくれてたし、ベスは祐司のことが好きだったからショックで出てこられなくなっちゃったんでしょう。
そうじゃなくて、問題は玲二ですよ。あの人、偉そうに僕らを怒鳴りつけるだけで、自分は何もしないんだから。あ、玲二に会いました? うるさい男でしょう。シェアハウスの管理人なんて、よく言いますよ。管理人ならもっとちゃんとした人が……あ、これは言っちゃいけないんでした。聞かなかったことにして下さい。
それで、犯人は捕まったんですか? 心当たりがあるかって、そりゃありますけど……玲二と同じ意見は言いたくありませんね。でも、祐司を殺したのはあいつです。母親です。
そんなはずはないって、刑事さん、あなた、あいつのことを知らないでしょう。祐司は虐待されてたんですよ? あいつは何日も帰らず、祐司にろくに食事を与えなかった。それどころか、風呂にも入れず、外にも出さず――祐司はあの狭い部屋から一度も出たことがないんです。出ると厳しく折檻されましたし、そもそも気力も体力もありませんでしたからね。一日中、ぼーっとゴミだらけの床に寝転がってるだけの状態でした。
え? あれは
何ですか、僕の知らない情報って。そりゃ、重要な情報はたいてい玲二が握りつぶしちゃって、僕のところまで回ってこないことも多いですけど……母親が祐司を引き取って新生活を始めようとしてた? い、いや、知りませんでしたけど、何ですか、それ。あいつ、また新しい男をつくったんですか? その男とカウンセリングを受けて、祐司だけでも……って、ミキは? ミキはもう十八だから自立させようと思ってた? 一人だけ、祐司からも引き離して?
そんな……そんな酷い話、ありますか? ミキがああなったのも、そもそも、あいつが男を……! ……いえ、何でもありません。
とにかく、祐司を殺したのはミキじゃありません。あいつです。母親です。え? でもそれじゃ、僕の行動の説明がつかないって? それってどういう……そんなに憎んでる母親が犯人なら、どうして僕は死体を隠すような真似をしたんだ、って?
それは……それはでも……そう、そうです。あのまま放置されてたんじゃ、祐司が可哀想だったから。だから、僕は祐司を埋めようとしたんです。でもまさか、よりによって警察に見つかるなんて。
みっちゃんに歌なんか歌わせなけりゃ良かった。……クック・ロビンですよ。ツグミが賛美歌を歌うんです。可哀想な彼のために。
……祐司は僕の手で埋葬されることを望んでいたはずです。あの母親は嘘つきです。カウンセリングだか何だか知りませんが、あいつが立ち直ったなんて嘘です。あいつは祐司が邪魔だったから殺したんです。それだけです。だから、僕はそれを埋めてあげようとしただけなんです。信じて下さい。
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