第二章 日本にて

空港 その1

 飛行機内でビールを頼み、速攻で飲み干すと、隣の佐野と鈴木に合図して、俺は目をつぶった。


 俺は飛行機のこの上下に揺れる感触が怖いのだ。

なんというか、安全感が全くない。

そのため、アルコールに弱いのにも関わらず、ビールを時間をおかずに飲み切ることで、強制的に自分を酔わせる。

そうすればすぐに眠くなり、気づいたら到着地だった、というのを狙っている。

食事はなくていいのだ。

今回の台湾への往便もそれで来た。

さすがに、出張で到着後に仕事がある場合には使えないが。

佐野と鈴木も慣れたもので、俺がこの行動をし始めると、寝やすいように声を掛けなくなるだけじゃなく、キャビンアテンダントが俺に声をかけるのも止めてくれる。


 そんな訳で、まぁ、気づいたら、またもやバルコニーのソファに座っていた。

目の前には赤いベレー帽女が仁王立ちしていた。

風が前回に比べて心なしか熱い気がする。


 同じように白いTシャツに、青い色の長いスカートだった。

光の差す方向のせいなのか、その青いスカートにぼんやりと、足の形が見える。

細長い足のようだ。

なかなかプロポーションが良いかも。

視線を上に向けると、前回は触ることができなかった小ぶりな胸がTシャツの上から確認できた。

もう、夢なんだから、いいじゃん。

そう考えていると、周りが暑くなってきた。

顔に目をやると、少し怒っている風だった。

そう言えば、俺の心は読めるんだったな。なぜか冷静になっている俺。


 意識を女に向けると、女はその怒りとともに、今回も機関銃のように中国語で話しかけてきた。

が、やはり俺には理解が出来なかった。

頼むから日本語で話してくれって。

そのうち、前回同様に俺に対して身振り手振りで会話をしようとするも、そのジェスチャーがおかし過ぎて俺が爆笑してしまった。

そのため、女は激怒しているかの如く、足踏みして感情を表しているが、それが子供が駄々をこねているみたいで可愛いなぁって強く思っていたら、静かになった。

 口がまだ動いているから、多分もごもごと何か言おうとしているようだが、真っ白だった顔色に少し朱色が指し、上目遣いでチラチラ俺を見てきた。

これはあれか、ツンデレか?

オタク向けの恋愛ゲームで王道だろうが、俺はリアルの女で見たことがないぞ。

でも、本当にいるんだ・・・・・・。


 そう俺がからかうように心の中で思っていると、女は目をつり上げて、左手で平手打ちをしてきた。

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