Ⅲ-Ⅱ
「アタシは特に聞いてないわね。まあアポロン様はヒュロスのこととか嫌いだし、その延長線でオレステスに協力してるんじゃない?」
「俺が召喚される以前から、か?」
「必然的にそうなるでしょ。そっちの動きをある程度読んで、それから協力したって可能性もあるんだし。不思議じゃないんじゃない?」
「……それもそうか」
納得するにはするものの、話は振り出しに戻っていく。
いや、それなりの情報が得られたと考えてもいいんだろうか? 確かにアポロンは、俺たち親子を嫌っている節がある。
トロイア戦争で父・アキレウスを討ったのだって、かの神が力を授けた結果に過ぎない。父を殺めた男の、本来の能力では掠り傷一つ付けられなかったに決まってる。
「……」
考えれば考えるほど、苛立ちは増していった。神々を敬うべき存在だと理解していても、それで感情が制御できれば苦労はしない。
まあ、暴走に身を任させるのも楽しいけど。
「まったく、だらしないのね」
俺が自分の考えに納得していると、またブリセイスが挑発を始めた。
本当にこの二人は懲りていない。もういっそ、我慢に徹した方が良いんだろうか? せめてこういう場所では静かにして欲しいんだが。
「長々と敵地にいたのに、まともな情報の一つも寄越せないのかしら? さすが箱入りのお嬢様ね」
「な、何言ってんのよ! アタシだってもう少し新情報は持ってるわ! 例えばラダイモンが、特殊な聖域で守られてるとか!」
いや先に言え。
そんな批難を視線に込めるものの、ヘルミオネは気付かずに情報提供を続けていく。ブリセイスの方も興味を抱いている様子。
「詳細までは把握してないけど、ラダイモンは神託によって守られてるんですって。それが発覚しない限り、都市が破壊されることはないそうよ」
「アポロンの加護、ってわけか……でも効果があるのは都市だけなんだよな? 住んでる人間までは守ってないだろ?」
「うーん、どうかしらね。オレステスはやけに自信もってたから、中にいる人間にも効果はあるかも」
「なるほど……落とし甲斐がありそうだな」
「と、とんでもないこと言うわね」
少し引きつった顔で、ヘルミオネは嘆息を零していた。
勝機があるのは嘘じゃない。神託とやらが都市を守っているのであれば、他の部分を攻撃してしまえばいいだけだ。メラネオスの作戦だって同じようなものだろう。
鉄壁の守りがあろうと、怖気づくことはない。
どんな存在にだって土台がある。そこまで守り通すのは困難だし、崩してしまえば連鎖的に上も崩壊してくれるものだ。
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