第5話 中華でしょうか?

温泉に、行ってきた。


はーっと湯上がりに父とオセロして黒を全部真っ白に変えられて、祖母は知らない人と相撲観戦してるし、母はマッサージ機に腰掛けていたし、弟は外で煙草。


「さ、帰るか」


とにかくそこを後にし、夕飯をどこで食べるかああだこうだ話していた。

そのうち市内近辺の工業地帯に入り、そこである一軒の中華料理屋に入った。


ささっと車を降りて五人であることを伝え、ささっと席につきああだこうだと注文した。


私は、ごま団子にノンアルを注文したのだが、なぜだかノンアルが来なかった。


まいっかーとごま団子を食べていたら、祖母が「そんなんお菓子やないか、子供のもん食べて」と怒った。


ええやん、他の門も食べるし、そう返してもくもくと咀嚼していた。かりかりとしていて美味しい。


そのうち母の担々麺、祖母のラーメン、父の五目あんかけ、弟のオイスターソース炒めが届き、皆それぞれ食べた。

私はなんとかノンアルにありつき、頭の中でくるりの三日月を再生しながら、「こんな幸せに浸っていたら、いつか埋め合わせが来る」と最近志賀直哉を読んだせいか暗い気持ちにもなりながら幸せを噛み締めていた。

祖母が少しラーメンを分けてくれた。スープを飲む。美味しい。


帰り道、いつか埋め合わせをする日が来るのではないかと、なんだか寂しかった。

幸せの中にありて、私は寂しい。

いつかお別れを告げる日が必ず来るのだから。


私だって馬鹿じゃないんだ。

だから先延ばしにしていく。誰にも何もされないことを嬉しく思いながら、当たり前にある日々、街歩きをしていて幸せすぎて泣けてしまったことを思い出した。


どうして街を歩くだけで涙が出たのか、あなたにわかる?


それだけの幸せすら取り上げようとする人達よ、私たちは一人ひとりが強い。

必ず幸せになる。必ずだ。


その日を君に約束しようと、遠い日々に帽子を投げたら、いつかの弟が被っていたっけ。

顔を隠すように、深々と。


最近太り気味でいけないや。

それだけ幸せなんでしょうよ。

今はそう思うことにしている。


こんな私たちに、果たして雷は落ちるのだろうか。

明日からも締まっていこう。

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君と飲むコーラに、救われてた 夏みかん @hiropon8n

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