第6話 そして非日常は訪れる

 あれから1時間、一応一区切りが出来たため西牙と可奈は高等部の学食へと向かっていた。


 学食と言ってもこの夏休み期間は基本生徒達の弁当などを食べるために解放しているもので、当然二人はコンビニで買ってきた弁当をそこで食べるために移動していた。


 そんな矢先だった。


 西牙が今まで電源を落としていたスマートフォンの電源を入れると同時に非日常の事象が起こったことを告げる着信音が鳴り響く。


 可奈も慌てて同じようにスマートフォンの電源を入れると同じ着信音が鳴り響く。

 普段はどちらかに掛かってくるが、場所が場所なため二人とも電源を切っていたためこのような形になったようだ。


「はい。……すみません、図書館だったため電源を落としてまして。……はい、今隣にいます」


 二人とも電話先の相手にそう答える。


「……間違いないんですか?」


 聞かされた内容に西牙の表情が険しくなる。


ぬしと呼べそうな存在がいたなんて…」


 つい先ほど昨日西牙が出向いた公園で再び悪霊とみられる被害が発生し、既に取り返しの付かない事態になっていると報告が来たそうだ。


「それで今は…」


 一応周囲の目に違和感がないよう可奈はイヤホンを取り付け別のことをしているように装う。


 そしてその横をアスカと恭子、学食を利用していた生徒達が二人の前を通り過ぎていく。


「とにかく1度用意に戻ります」


 こうなってしまっては長居するわけにもいかない。しかし、電話の向こうからそれを静止する別の声が聞こえる。


「……文香もいるのか」


『うん、偶々用があって通りかかったときに気づいて…』


「一応拘束結界を張っているという訳か」


 電話の向こうから聞こえる声の主――二人のいとこでもあり同じ能力を持つ幼なじみの説明に西牙は現在の状況を改めて確認する。


『ついさっき被害者の移送と人払いの仕掛けが終わったから少しは猶予出来てるよ』


「……分かった。夕方そっちに合流で良いか?」


『えっと……うん、大丈夫だって』


「じゃあまた後で連絡する」


 通話を終えると西牙は大きく息を吐き、開けられた窓の縁に体を預ける。


「こりゃ、頭が痛いな……」


 照り返す熱の暑さを背中に感じつつ西牙はこれからの手順を思案し始めた。

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