ボルゾイの王子様との「もふもふ~」な恋!

 ボルゾイという犬は日本にはなかなかいないそうですが、私はそのボルゾイ犬に一度だけお会いしたことがあります。体全体は相当大きいのに、線は細くて、恐ろしく小顔。道端に佇むお姿はあまりに高貴な雰囲気に満ちていて、まさにどこぞの王国の王子様が魔法にかけられて犬になっているのではないかと思いたくなってしまうほどでした。

 そんなボルゾイ犬をほうふつとさせる池崎さんと出会ってしまった、トイプードル的な主人公。近寄り難い気品を漂わせる相手に、繊細な心を悩ませながら、ピュアな思いを一生懸命に寄せる姿は、何とも可愛く、切なく、そしてリアルです。行ったり来たりを繰り返しながら徐々に二人が距離を詰めていく過程はごくごく自然で、いわゆる激甘系とは一線を画したリアリティある展開に、読み手はすっかり夢中になってしまいます。
 物語の大きなスパイスとなっている飼い犬たちの描写もとても可愛らしくて、ワンワン初心者の私でさえ、作中のピュアで優しい犬たちにとても癒されてしまいました。読了後の今は、愛犬家の方々の心情がとっても分かる……。
 たまに登場する「池崎さんの夢」は、物語を進める役割を果たすのみならず、作品全体のもふもふな雰囲気を強烈に印象付け、さらには激甘シーンを柔らかく表現するという、まさに脱帽モノのテクニックでした。これまで激甘はあまり得意でなかった私が、すんなり「にゃは~♡」と尻尾を振りまくって堪能してしまいましたから!

 愛犬家の方もワンワン初心者も、激甘大好きな方もそうでない方も、是非是非楽しんでいただきたい、オールラウンドにおすすめの作品です。読んだら必ず幸せな気持ちになって、そしてこう叫びたくなるでしょう。「もふもふ~!!!」

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